壱の話 会ってはいけない者と遭遇
俺は何故か黒い龍の前でぶっ倒れていた。
どうしてこうなったかと言うと、それは1時間前に遡る。
「ふぅ、ここが楽園郷か。」
楽園郷って言うわりには、殺伐としているのだが?
一応、近くに街がないか探すか。
「おっとこんな所に看板がある。何々? この山、冥龍がいるため、立ち入り禁止。」
ええと、確かあの女性、冥龍がいる山には行くな!っていってたよね。つまり・・・
「ここから出なければならないな。」
「そうだな。ここから出るか。」
あれ?俺、誰と会話した?
「お前の後ろにいるよ。」
ザアッ
「お前、いつからいた?」
「お前さんがここに来た時からだよ。お前さん、名前は?」
「名前か?名前は・・・あれ?思い出せない。」
なんでだ?前世の記憶は思い出せるのに、名前が思い出せない。
「もしかして、記憶を失ったのか。」
「お前さんから魔力、妖力、霊力を感じるの~。基本的には、この世界には、魔力、妖力、霊力のうちのどれか一つしかとれないのだが、お前さんは特別な存在のようじゃ。能力は何かな?どれどれ」
「あんたの名前を聞いてない気がするんだが、あんた、名前は?」
「冥龍と言えば、あんたもわかるだろ。ほう、あんたの能力も特別な物じゃ。」
「冥龍か、ある女性が俺の能力だとあんたに勝てるそうだ。ここは一つ勝負してみないか?」
「お前さん、やる気か?なんでだ?」
「俺の能力がどういう風な物なのか。一度試してみたいと思っていてな。いいだろ。」
「いいだろ。相手してやる。お前の能力は4つ。
『この世に存在する物全てを造り出す程度の能力』
『女性と接吻を行い、相手の能力をコピー、そして、その能力を増強する程度の能力』
『相手の能力を一時的に無効にする程度の能力』
『人や物などを触れずに浮かせる程度の能力』
こんな物かのお前さんの能力は。」
ふ~ん。まあまあ強そうな能力だな。
「教えて頂き感謝するよ。」
「もし、お前さんが負けたら、精神だけを少し乗っ取らせてもらうよ。」
「いいよ。こっちがそうするなら、俺が勝ったら、強固な檻にとじこめるから。」
カシャン
俺の手に2本の太刀が現れた。
「能力を全開に使って相手してやる。」
太刀を振って、次の瞬間、何故か吹っ飛ばされ、そして、動けなくなっていた。
「な、何が起こったんだ?」
「馬鹿な奴め、能力を貰ってすぐに体が順応するわけないだろ。」
そして、首筋の近くで何かが刺さる音がした。
「お前さんの負けだ。」
冥龍が俺の近くに降り立ち、そして、
姿を龍から背の高い女性に変わった。
「お前、龍じゃなかったのか?」
「さっきの姿は仮の姿で、本来の姿はこっち。」
「じゃあ、俺を好き勝手に使って。」
「ふ~ん、じゃあ、お前さんの精神を乗っ取らせてもらうよ。えい!」
「うっ、なんか変な気分。」
「言っとくけど、私がイラついたら、精神暴走させるから。」
「・・・・覚悟しときます。」