表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三痕歌  作者: 雨秋
1/2

第一話 蒼い空 秋の雲

濃い霧が立ち込めている。

彼は、一歩一歩足を進めるが、土を踏む感触がない――


――始めから道などないのかもしれない。


「ねぇ」

後ろから、声をかけられた。

「本当にいくの?」

「・・・・・・心配してくれているの?」

「ッ!――誰がッ!!」

彼は、微笑を浮かべてまた歩き出した。



「いらっしゃいませ、どのような御薬をお探しですか?」

狭い店に入ると、いきなり10才ぐらいの男の子が、茶色の髪の毛を揺らして現れた。

着ている白衣は、明らかにサイズが合っていない。

胸には、名札をつけていて、信じたくないが認めなくてはならない現実を見た。


蒼月双葉アオツキフタハ/店員」


明らかに、親のお手伝いにしか見えない少年は

「あの・・・正社員ですか?」

「社員?・・・ここは会社じゃないですよ?」

アルバイトではなく、店員だった。

「ですよね・・・。あの『白鴉ハクア』って言う薬を買いに来たんですけど・・・」

双葉は、存在しない薬の名に、一寸も驚かずに微笑み、

「あぁ、じゃぁ奥へどうぞ。ご案内します」

店の奥へと、手を引いて行った。


奥の部屋と言っても、店の奥にあるレジの後ろの小さな部屋だった。

双葉は、その部屋に合ったパイプ椅子に座らせて、

「じゃぁ、店長を呼んできますね」

部屋を出た。

壁が白くてとても綺麗な部屋だった。

しかし、右端にある机の上は書類が山積みになっていて、非常に汚かった。

しばらく、手遊びをしていると、店長なる者が部屋に入ってきた。

「お待たせしましたー」

屈託のない、素敵な笑顔で参上したのは、

「・・・同じ年?」

すなわち、中学生にしか見えなかった。

白衣の下には、黒いベストの下にワイシャツを着ていた。

どこにでもいる、中学生のようだ。

胸に『薬屋政秋くすりやまさき/店長』と書かれた名札のついた白衣を脱ぐと、それを書類の陰になっていた、椅子に掛けた。

「残念でしたー、薬屋の店長が、中学生と同じ年のはずがないしいねー」

「そうですよねぇ・・・」

政秋は、微笑むとパイプ椅子に座り

「っで、僕に何をして欲しいのかな?」

いきなり、本題に入った。

「・・・・・・ハイ、あの・・・この店の近くにある、坂上さかのうえ中学校って知ってますか?」

「知ってるよ」

「・・・僕は、その学校の風紀委員なんですけど・・・それで、この間階段で転んで怪我をした人がいるんです・・・それも何人も」

「ふぅん。で?」

政秋は、さして興味が無いのか。いつの間にかルービックキューブを回していた。

「・・・はい、学校には7不思議があるんです。それで、そのひとつが『断罪の階段』」

「ふぅん」

「転んで怪我をした人は、全員その断罪の階段で怪我をしたんです」

「すっごい、偶然?」

「いいえ、過去にも何人もあの階段で足を滑らして、怪我・・・亡くなってしまった人も」

「・・・・・・っで、僕に何をしろと?」

興味が無いのを通り越して、もはや不機嫌そうだった。

「・・・あの、その『呪い』とかなら、僕達にはどうしようもないし・・・その・・・」

政秋は、完成したルービックキューブを膝の上におく。

「『呪い』を払えと・・・」

「・・・そうです」

政秋は、ため息をつくと口を開いた。

「じゃぁ、まずはその階段を見てみよう・・・そうだな、次の土曜日。明日にでも学校を案内してくれると助かるんだけど・・・頼まれてくれる?」

「・・・はい」

政秋は、微笑むと立ち上がり。

「ありがとう・・・じゃぁ、明日」

「ありがとうございました」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ