表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆★ リリアと『ソードの不思議』 ★☆  作者: Jupi・mama
第一章 『色んな人との出会い』
4/5

『ゴードン』との最初の出会い (2)

     ☆ ★ ☆ (6)


 私はソードに乗り生い茂る葉の合間からゆっくり降下し、私の視線はゴードンを見ているが地面に近づくとケルトンは私のそばに来たけど、彼は反対に私から遠ざかるように後ろに下がり、私から距離を確保しているようだ。


 私の両足が地面に着くときに、自転車を降りるようにソードから降りて彼の正面に向き直り、ブレスを一回触れ合わせてこのソードを消すと、彼の視線は消えたソードの何もない空間に少し止まっているようだけど、私を確認するかのごとく彼の視線が私の瞳の中に入ってくる。


「……樹の上から人間が降りてくるとは……今までの中でいちばんの不思議だ」

 と、彼がそう言ったときの視線は、私の姿をすべて捕らえているかのようで、上から下まで一瞬にして彼の視線が走る。


「驚かせて申し訳ありません」

 と、私はそう言ったけど、彼を近くでよく見ると五十歳は過ぎているような気がする。


 私の身長は百六十三センチほどだがもう少しは高いような背丈で、髪を伸ばして後ろで一本に結んでいるのは、先ほどから気づいていた。


「俺がこのブレスを右手に確認してから、今までに何度も不思議なことが起こったが……今日がいちばんの驚きだ」

 と、私の瞳の中を覗き込むように、まじまじと見ながそう言っている。


 彼の服装を先ほどからよく見ると、紺色の生地に白い縦縞の入った甚平みたいな合わせの深い上着を身につけ、それがお尻をすっぽり隠すほどの長さで、黒くて幅広の帯が前面で結んであり、上着と同じ色のストレートみたいなズボンをはいて、その帯の右側に紺色で無地の少し大きめの巾着袋のような袋が結びつけてあり、左側には茶色の無地で右側の半分ほどの大きさの縦長の袋だ。


「初めまして、ゴードン。私の名前はリリアといます。弟にブレスを譲っていただき、ほんとうにありがとうございました。最初の会話はリズが私に話した言葉を繰り返してお伝えしました。先ほどの声はリズ本人の言葉です」


「……なるほど、リリアはリズと会話ができるということかな?」

 と、彼はそう言ったけど、彼の口元には無精ヒゲが生えている。


 瞳の色が薄い茶色で目元が少したれ気味で、人のよさそうな感じの男性だと思うけど、彼の見開かれた目は私の会話を含めこの現実を見据えているようだというよりも、彼の頭脳をすべて使い観察しているようにも見える。


「私は両手首にブレスがあります。それでリズと会話ができたと思います。ケルトンのブレスは左手にしかなかったので、リズの言葉は聞こえませんでした。でも、私たちは別々にそのネックレスをしていました。私のネックレスをケルトンの首にかけると、ケルトンは彼女の言葉が聞こえたと言っています。それで……その二つのネックレスをかければ……ゴードンはリズと会話ができると思います」

 と、私は自分の現状を彼にそう説明したけど、現実はそういう原理なのだと思うが、信じてもらえるのかな?


「そうか……なるほど……リズの話す言葉が俺にも聞こえるということだな」

 と、彼はそう言ったけど、その声の響きは先ほどと違い思考回路が少し変わったような気がする。


「私も意味は分かりませんが、そのネックレスのせいだと思います」

 と、私は追加するようにその言葉を使う。


『ゴードン、私に素敵な名前を付けてくれてありがとう。直接お礼が言えてよかった。私も理解しがたいけど……そのネックレスで聞こえるみたいね。それ以外には考えられないわね』

 と、リズが優しそうな声の響きでそう言ってくれる。


「聞こえているよ、リズ。これのお陰だな。ブレスが一つでは聞こえなかったから俺の方が礼を言いたいよ。そうすると……リズの仲間とも会話ができるのかな?」

 と、彼がそう言った声の響きはとても優しそうで、古い親友というよりも自分のパートナーに話しかけているような雰囲気である。


『それは分からないわね。私から風の音で皆に知らせましょう。それで聞こえるようだと、どこにいても私と会話ができるわけね』

 と、リズの話した声の響きも、彼と同じような含みのある言葉だと思ってしまう。


「そういうことが実際に起これば、さっきのリリアの登場よりもっと不思議だな」

 と、彼は少し笑みを含めて私を見ている。


『そうね。でも、近くで大きな樹を見かけると触って話しかけてみてよ。そうするとゴードンがどこにいるのか風の音で私には分かるからね』


「この前みたいに……また森の樹に助けてもらえるのか」


『そうよ。この前は偶然に知ることができたけど、今度からは確実に分かるわね』


「この前は偶然だったのか、助かったよ。いつだか忘れたが、俺が目覚める前で夢の中だと思うが頭の中で声がした。俺と同じブレスを左手に付けた人間を捜すようにと言われた。目覚めると俺の右手にこれがあって驚いたぞ。これはどうしても俺には外せなかったが、ケルトンがこれを外してくれたのだな。そのブレスとひき替えにこれは俺がもらってもいいのだな」

 と、彼は右手で二本のネックレスを触りながら、自分がブレスを手に入れた経緯をそう説明してくれる。


「はい。紛失しないように首から外さないでください」

「そのソードとは何だ? どうしてそこに現れた? これも……俺が今までに体験してきた不思議だと思えばいいのだな」

 と、彼が念を押すようにそう言っているみたいで、リズとの会話とソードの存在を比較しているのだろうか。


「そう思っていただけるとありがたいです。私にも意味が不明で説明が難しいです。私は自分のソードと会話ができます。今はケルトンも同じ状況だと思います」

 と、私がソーシャルとの会話のことをそう説明して、より現実的な物だということを理解してもらいたいと思う。


「両手にブレスをしていると、そのソードと話しができて空を飛べるのだな。俺はこの二つのネックレスでリズと会話ができるから、お互いによかったのだな」

 と、彼はそう言いながら、私たちの背後にどんと存在しているリズの胴体のような樹に、私からそっと視線を動かすけど、彼は私の言葉を信じてくれるのだろうか。


「そう思っていただきありがとうございます。お互いのソードが私たちを導いてくれると信じています。話しは変わりますが、私たちは南の城に行きたいのですが……場所を教えていただけますか」

 と、私がそう尋ねると、彼は少し驚いたような気がするけど、ケルトンは私の右隣に立っているが、彼が少し間合いを詰めるように近づいてくる。


「俺は南の城の近くに屋敷を手に入れたからな。明日赤い実を拾い終わると案内してもいいぞ。そうだ、俺の屋敷に泊まればいい。今年の冬はあそこで過ごそうと思う。これも何かの縁だな。気に入ればずっと住んでもいいが、そのソードで赤い実を運んでもらえると俺は助かるし、ほかの人間に見つかると大騒ぎしそうだな」

 と、彼は少し笑みを浮かべてそう話すから、その言葉に私は驚くけど、さっき出会ったばかりなのに、この話しを信じてもいいのだろうか。


「分かりました。私たちがお屋敷でお世話になるようでしたら、赤い実を運ぶ方法を考えます。夜に移動すれば誰にも見つからないと思います」

「リリア、袋の中に赤い実を入れて紐で左右に提げると運べると思います。この考えはどうですか。私のソードはソーシャルよりも小さいですね」

「左右に紐で提げると運べるわね。ケルトンが大人になるともっと大きくなると思うよ。私みたいに名前をつけると会話が楽しくなるからね」

 と、どうなるかも分からないけど、大きさを気にしているみたいなので、そう返事をしてしまう。


「私はトントンという名前を考えました」

「かわいい名前を考えたのね。私は女性の声がするけどケルトンはどっちなの?」

「男性でした」

「そう。もう彼に名前を伝えたの?」

「まだ伝えていません」

「私はゴードンに話しがあるから、ケルトンは彼に名前を教えてあげてね。今からトントンに乗る練習もしなさい。早い方がいいと思うよ。ソーシャルとは乗り心地が違うかもしれないから慣れなきゃね。遠くに行かないでよ」

 と、私はケルトンが自分のソードに乗りたいと思い、注意も一緒に促がし乗る許可を出すためにそう言うことにする。


「分かりました。ありがとうございます」

 と、彼は嬉しそうにそう言ってから、後ろを向き三回触れ合わせてソードを出し、それに乗ってからリズの樹の裏側に姿を消す。


 私がゴードンを見ていると、彼の視線はケルトンの後ろ姿が消えてしまった位置に、やや固定されているようだ。

 四回目を読んでいただき、ありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ