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「貴様が近衛騎士隊隊長のクラウスか」


式場の警備確認を再度行っていれば、後ろから声をかけられ振り向く。そこには、ローレンス卿の息子であり・・・ドロテア様の結婚相手のグレオが、この間の披露目の儀同様の、あのきつめの目をして立っていた


「はい、そうですが・・・何か御用でしょうか」


グレオと喋るのは癪に障るが、もう変えられないことに対してくよくよしていても、女々しいだけだ


俺がそう答えれば、ふむ、と言ってグレオは俺を上から下まで眺め


「噂に違わぬ屈強な男だな、近衛騎士隊隊長としては申し分ない。きっと貴様ならこの式を成功へ導いてくれるだろう」


そう言葉をかけてきた。この式・・・か・・・。俺はグレオの言葉に悲しくも反応しつつ


「・・・・お任せください、グレオ様」


そう返すことしかできなかった。俺のその言葉を聞いたグレオは、満足げな面持ちで


「では、引き続き頼むぞ」


そう言葉をかけながらその場を後にしようとした。しかし、途中で立ち止まり、クラウス近衛騎士長、と俺に再度呼びかけた。俺がそれに返事をすれば、今度は振り向かずに


「・・・・・・・すまないな」


なんてわけが分からないうちに謝られ、ただ呆然とするしかなかった



※三人称視点


「建国当時からなんら変わりのない、平和で穏やかなこの日を迎えられたのは、この国の守護神であるエドナ神様の加護のおかげなのです。


そんな今日、我が国の第一王女、ドロテア・シュタルク様と、エドナ神様がお決めになられた王女の結婚相手である、オズワルド・ローレンス卿のご子息であるグレオ・ローレンス様の結婚式ができるのも、神の思し召しの一部でしょう。


残念ながら国巫女であるセレナエは、体調が優れないらしく出席ができないようなので、代理巫女である私が、進行をさせていただきたいと思います」


式典でおなじみの少し長い祝辞を述べる代理巫女の姿を、ドロテアは白の祭儀用の服を着たグレオの真横で見ていた


横に居るのがクラウスだったなら・・・・と一瞬考えて、沈んでいた心を少しだけ浮上させたが、先ほど母親である王妃に言われた言葉を思い出し、また沈む


ドロテアの横に居るグレオは、そんな表情がころころ変わるドロテアの顔を横から盗み見ながら、自分の父親がしたことに対して罪悪感を抱いていた


クラウスに謝罪したのもそのせいだ


父親と同じ、蛇が獲物を狙うときのように鋭い目を持って生まれてきたグレオだったが、外見とはかけ離れた心の持ち主だった


争いごとにあまり興味がなく、ただこの国の平和を望み、秩序を守るようなことが好きで、休日は愛猫のマルダと一緒に読書をするような、そんな男だ


そんなグレオは、父親であるオズワルドが不正を働き、自分を出汁に王政を乗っ取ろうとしていることを快く思っていなかったが、長年オズワルドの事を見てきた彼にとって、抵抗などしても無駄だということが分かっていたので何もできなかった


各々のそんな気持ちを他所に、式はどんどん進んでいき、ついに


「では、グレオ様、ドロテア王女の手の甲にキスを」


代理巫女が式の最終手順を口に出した。この国では、決められた巫女の前で男が女の手の甲にキスを落とすと、その二人は結ばれなくてはいけない慣わしなのである


グレオはその言葉を聞きドロテアの足元へ跪き、ドロテアはその様子を見て、1ヶ月前クラウスが中庭で同じことをしていたのを思い出した。しかし、泣き出してしまいそうになりそんな考えなどやめ、グレオに手を差し出す


その手をグレオが掴み、緊張が走る。ゆっくりとした動きで、グレオの唇が手袋をしたドロテアの手の甲に当たろうとした、その時


「ア、アレクシス王よ・・・・!お待ちください・・・・!」


そう言って走ってきたのはなんと、体調不良でこられないはずの国巫女セレナエだったのだ

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