第三話 『異変』
『ジビキが殺害された』。
天王野は教室に入ってきて俺たち七人に近づくなり唐突に、そんな現実味のない台詞を発した。俺はその台詞で昨晩見たあの悲惨な光景を思い出し、俺以外の友だちはまるで信じられないといった様子で驚いていた。
その内の全員が全員、驚きのあまり沈黙している。何をするわけでもなく、何かを言うわけでもない。俺たちはただただ驚いているしかなかった。しばらくしたとき、不意に声を発したのは海鉾だった。
「……えっと、葵聖ちゃん……? それって、どういう――」
「……今言った通りの意味。……昨晩、ジビキは殺害された。……人間としての原型をとどめないほどに四肢を切断されて、グチャグチャに、無残で酷い姿で。……キッヒ……ヒへハハハハ!!」
天王野は海鉾に尋ねられると突然顔を勢いよく上げて、海鉾がその台詞を全て言い終わっていないにも関わらずそう答えた。しかも、その表情は普段のような眠そうな表情でも、つい先ほどまでの怯えているような表情でもない。それは、驚いている俺たちのことをさらなる恐怖へと突き落とすかのように、目を見開いて妙に楽しそうに笑っていた。
俺は普段はまず見ることがない天王野のそんな表情を見て、ふと思い出した。この表情は……この人間の根本的な恐怖観念を刺激するかのように狂気を感じさせる表情は、昨晩地曳が死んでいたにも関わらず俺に見せたものだ。
そんな天王野の狂気じみた表情を見たことによって、さらに言葉が出なくなった俺たちに向かって、天王野は言葉ともつかぬ言葉を発し始めた。また、そう思った次の瞬間には不気味な笑い声を上げ始めていた。
「ジビキは死んだ……死んだ死んだ死んだ死んだ……バラバラの状態で……フッ……イヒ……アハハ……アハハハハハハハハ!!」
「ちょ、ちょっと!? 葵聖ちゃん!? 大丈夫!?」
天王野は、動揺していながらも心配している海鉾に両肩を掴まれて前後に揺さぶられている。それにも関わらず、地曳が死んだことが余程ショックだったのか、おかしな笑い声と台詞を繰り返し放ち続けた。その天王野の姿は天王野の頭のネジがどこかへ飛んでいってしまったのではないかと俺たちに思わせるほどだった。
だが、ちょっと待ってほしい。昨日俺が地曳の死体を見たことが、つい先ほどの天王野の台詞によって現実の出来事であったと確定した。そのことについては何もおかしなところはないからいい。でも、何で天王野はそれを知っているんだ?
俺が地曳の死体の目の前で目を覚ましたときには近くには誰もいなかったはずだし、俺は昨晩のことを今まで誰にも言っていない。ということは、俺があの光景を見た前後に天王野もあの光景を見てしまったということなのだろうか。
俺はあの光景を幻覚か何かであると思い込んで一時的に忘れることが可能だったが、おそらく、天王野にはそれができなかったのだろう。だから、今どきニュースでもテレビでも見ないようなあんなショッキングな光景を見て動揺してしまった結果、こんな風に精神に不安定な状態になってしまったのだろう。
「わ、わたし、ちょっと葵聖ちゃんを保健室に連れていくから!」
「あ、ああ。頼んだ」
天王野の様子が明らかにおかしいことを心配した海鉾がそんな台詞を言って、ケタケタと壊れた人形のように笑い続ける天王野の背を押して教室をあとにした。確かに、あんな状態では授業どころではないし、今も教室の中にいるクラスメイトの大半の視線が天王野に集まっていた。おそらく、みんなもこの様子では天王野のことが気になってしまうだろうから、海鉾の判断は正しいと思う。
教室から出て透明な強化ガラス壁の向こう側に行った二人の後ろ姿をただただ呆然と眺めながら、残された俺たち六人と仮暮先生は沈黙しているしかなかった。その状態が数十秒程度続き、不意に仮暮先生が口を開いて今回の事件について話し始めた。
「あなたたちは地曳さんと仲がよかったわよね……?」
「えっと、はい。そうです……」
話し始めた仮暮先生に、土館が動揺しながらも一言だけ答える。
「天王野さんが言った通り、昨晩地曳さんが学校近くの人工樹林で亡くなっているのを発見されたわ……亡くなった原因は事故や自殺ではなく、おそらく他殺だろうって警察の方が仰っていました……」
「……え……?」
「そして、偶然なくしものを探しに人工樹林の中に入っていた天王野さんが最初にその現場を発見して、人工樹林の一番近くにあった交番にそのことを伝えに行ったの……」
「そうだったんですか……」
誰も、何も声を発することができなかった。俺の友だちグループにいる友だちの内の一人である地曳が死亡したということもしかり、その死亡状態が悲惨な状態だったこともしかり、繊細な心の持ち主に見える天王野がその現場の第一発見者になり、狂ってしまったこともしかり。
やはり、天王野もあの残酷な光景を見てしまったからそのことを知っていて、しかも、バラバラ死体というあまりにショッキングな光景を目撃してしまったからあんな風になってしまっていたのか。
俺は友だちが死んだことについても本当は納得したくはなかったが、それでも、俺たちの担任の先生でもある『あの』仮暮先生に直接言われたのなら今回ばかりは納得せざるをえなかった。
……あれ? でも、確かさっき天王野は『地曳は四肢がバラバラの状態になっていた』みたいなことを言っていたよな? しかし、それは少しおかしくないか?
俺が昨晩見たあの光景が現実のものだとするならば、地曳は『全身に大量の切り傷をつけた状態で死んでいた』だけのはずだ。四肢はしっかりと胴体にくっ付いていたはずだし、いくら暗かったとはいえ万が一にもそれを見間違えるとも思わない。
だったら、何でだ……?
すると、地曳が死んだことをあまり信じたくなかったのか、逸弛が自分に抱き付いていた火狭をそっと椅子に座らせて立ちあがり、額に汗を浮かべながら仮暮先生に話しかけた。
「……せ、先生。今度は何の冗談ですか? 冗談は独身の先生の年齢くらいにしておいてくださいよ。それに、それが事件だとしても事故だとしても、絶対にありえませんよ。今どき、そんなことが起きるわけないじゃないですか。冗談を言うなら、もう少しマシな――」
「水科君、これは冗談でも嘘でもありません。今朝、私もその話を天王野さんや警察の方から聞いた後に少し調べましたが、これはまぎれもない事実です。しばらくの間はあなたたちもつらいかもしれませんが、現場の第一発見者である天王野さんも先ほど見た通りの状態です。なので、彼女の言動に違和感を感じたら、彼女の唯一の友だちであるあなたたちが優しく接してあげてください……あと、水科君。余計な発言は控えるように」
「……はい。すみません」
逸弛のほうを向いていた仮暮先生は逸弛に余計なことを言われたからではなく、それとは別の理由で今すぐにでも泣いてしまいそうな険しい表情をしており、涙を必死に堪えている様子がよく分かった。先生だって教え子が一人死んだことに悲しんでいるが、それを他の教え子に見せるわけにはいかない。そういう思いがあったからなのだろう。でも、それが今回の事件を突如として起きた悲劇だったことを物語っていた。
そのとき、土館がふと何かに気がついたらしく、仮暮先生に一つだけ質問した。
「……先生。それで、犯人は……?」
「それが、まだ見つかっていないみたいなんです……それに、地曳さんのPICもどこへいってしまったのか未だに行方不明ですし……電源を切られているのか、その場所の特定もできていません……私がメインサーバーから直接PICにアクセスしても、なぜか途中で強制的に遮断されてしまいますし……今回の事件は本当に分からないことだらけです……」
犯人が捕まっていないことや地曳のPICが行方不明であることを不思議に思っていた俺たちだったが、それを話していた仮暮先生の様子を見ているとそれ以上に何かを言い出すことも質問することもできず、ただ頷くことしかできなかった。
そして、仮暮先生が涙目になりながら教室を出た後には、何か台詞を発することもできずに沈黙しているしかなかった俺たち六人の姿があった。
しかし、そんな中で俺は疑問に思っていた。今どき、殺人事件も人身事故も起きるわけがないことはつい先ほど説明したが、それでも今回の殺人事件は違和感しかない。もし誰かが地曳のことを殺害したのなら、PICに内臓されている装置によって事件当時の状況が警察庁本部に自動で送信されているはずだからすぐに犯人は特定できるはずだ。それなのに、あの現場にいた俺さえ今まで事情聴取をされることはなかった。
いや、地曳のPICも地曳が殺されたときに紛失していることも考えると、犯人は地曳のPICが目的で地曳を殺してそれを奪いとり、自分と地曳のPICの電源を切って逃走したということになるのか。でも、たとえそうだとしても、居場所の特定くらいなら簡単にできそうなものだが。
現代医学の革命的な進歩によって基本的に人間は死んでいなければどんな病気も怪我もすぐに完治させることが可能になり、その結果、生命維持装置の存在も考えると理論上は永久的に生き続けることが可能となってしまった。そして、全人類はそれぞれの個別IDやその他の個人情報などの所持と管理以外の目的でもPICを腕に付けている。
このPICはその人がこの世に生まれた瞬間に日本政府から一機だけ進呈され、誕生から丁度百年間が経過した瞬間、その所持者の腕から脳と心臓に向けて電気ショックを与えて痛みや苦しみを与えることなく安らかに即死させるという機能がついている。これによって過度な人口爆発や過度な少子高齢化が起きることはなくなった。
十五年前に終戦を迎えた第三次世界大戦の際に、世界各国が戦争で優位に立つために宇宙へ人工衛星を打ち上げ過ぎたせいで、地球の周囲には大量のスペースデブリが散乱し、現在に至ってはそれによって人類が宇宙に進行することはできなくなった。宇宙船や衛星を打ち上げようとしても、スペースデブリが起動の邪魔をし、時には大事故に繋がる可能性があるからだ。
また、戦争の影響で世界中の人類の内の四分の一以上は死亡し、その他の生命体の生態系や遺伝子情報にも多大な悪影響を及ぼした。現在、地球上には人類とその他数千種類しか生命体は存在していない。
陸地の開拓は五年くらい前にはほぼ完全に終了したが、未だに海洋に関してはほとんど開拓は進んでいない。海洋にいた生命体は小さいところでは細菌レベルまで全て死滅し、海は人間も海水に手で触れるだけで致命傷になりうる不治の病に感染するほど危険な液体を溜めているだけの、無駄に面積が広いだけが取り得の貯水池と化した。
戦争中に大量の資源を消費したことによって廃棄物をエネルギーに変換させる新技術が模索され、地球の表面積の七割を占める海を利用可能な状態に改善するまでにはまだ時間がかかることから地下都市も開発され、出生率では人間の遺伝子的な問題と戦争中に大量発生した放射能の影響から男子が圧倒的に少なくなってしまった。
今このときの日本もその総人口は一億人にも満たず、俺の友だちの中には親や兄弟を失った人も多く存在する。実際のところ、俺の母さんも俺がまだ幼い頃に戦争のせいで死に、今は父さんと二人で暮らしている。
戦争自体は世界中の国々が全戦力を使用して何年間にも渡って行われていたが、ほぼ同時期に世界各国の資源が底を尽き、それまでにも大量の死傷者と経済的な大損害が出ていたことによって、一応勝敗が決することなく平和的に第三次世界大戦は終戦した。しかし、戦争によってもたらされた地球や人類への悪影響は今説明した通り、それまでの想定を遥かに超えた酷いものだった。
だからこそ、『人類は二度とあの惨劇を繰り返してはならない』。そうした考えの結果生み出されたのがPICだった。PICを全世界共通として一人に一台所持させることで、現在時刻や現在位置も、通貨問題や言語問題も、個人情報所持や情報管理などについても何一つとして困ることはなくなり、電気ショックの機能によって過度な人口現象を抑えることにも繋がった。
そして、死刑が廃止された代わりに新しく制定された、罪の重さによって時間を調整し、刑執行者の脳内の時間を何倍にも加速させて現実世界での一時間が脳内時間の三年間に相当し、そこで常に過酷な強制労働をさせられるほどの苦痛を直接脳内に味合わせるという『オーバークロック刑』と、PICを装着していることで絶対に逃れることができない追跡機能によって事件は起きなくなり、完全完璧な土地の区画整備と自動車や電車などの移動用大型機械の全自動運転化によって事故も起きなくなった。
第三次世界大戦終戦後の事件も事故も起きない平和な世界。俺たちが住んでいるのは、地球や人類やその他の生命体の未来を左右する激動の時代の後に作り直されたそんな世界にほかならない。
しかし、そんな完全完璧な世界を根本から否定するかのように、今回の地曳赴稀殺人事件は起きたのだった。あとに残された俺の友だちグループはそのことをよく理解しつつも、どこかもどかしい気持ちを抱えながらその日の学校生活を終えた。
天王野を保健室へ連れて行くために教室を出た海鉾だったが、あのすぐ後、一時間目の開始から少しくらいに教室に戻ってきた。また、天王野も二時間目が始まる少し前には教室に戻ってきて、いつも通りの眠そうな表情を俺たちに見せていた。それにより俺たちの不安は少しだけ軽減されたように思われた。
そして、本日の授業も全て終わり、放課後となった。俺を含めた俺の友だちグループの全員は、地曳の死に関係する今朝の天王野の様子や仮暮先生の話を思い出してつらい気持ちになりながらも、それぞれが帰宅するために帰る仕度をしていた。
『帰る仕度をしていた』とはいっても、実はいうほどすることはない。せいぜい、授業や課題提出で使用する一台のタブレットやその他の特殊な授業で必要な道具を鞄に詰め込んで、折り畳み式の机と椅子を元あった形に収納させるボタンを押す程度だ。
それらの行動が終わった後、昨晩のことと今朝のことについてじっくりと時間をかけて考えたかった俺はそのまますぐに自宅に帰ろうと考えていた。しかしその直前、逸弛が教室に残っていた俺を含めた友だちグループ全員に声をかけてきた。
「みんな、僕から一つ提案があるんだけど」
「提案?」
遷杜は唐突に発せられた逸弛の台詞を不思議に思ったらしい。遷杜がそんな風に聞き返した後、逸弛はにこやかに微笑みながら、しかしいたって真剣そうな雰囲気で続けて次の言葉を放った。
「今朝、仮暮先生と葵聖ちゃんが言っていた、赴稀ちゃんが殺された事件。それについて、正直なところあまり実感がわかないけど、僕は友だちを一人失ったことに酷く心を痛めているし、きっとみんなもそうだと思う。でも、おかしいとは思わないかい?」
「どういう意味なのかしら?」
「今どき、殺人事件なんて起きるわけがない。それくらいみんなも分かっているだろう? でも、今回はそれが起きてしまった。しかも、色々と不可解な謎を多く残して。だったら、その真相を確かめようとは思わないかい?」
「そういうことか」
つまり、逸弛の提案の内容は『不可解な死をとげた地曳とその殺人事件について調べよう』ということだった。おそらく、今は警察が調べている頃だと思うので、俺たちのようなただの学生がその現場に立ち寄ることはできないだろう。だがそれでも確かに、今回の事件について気にならないといえば嘘になる。
時代遅れの殺人事件が何で起きてしまったのか。そして、PICやそれ以外の監視システムがあるにも関わらず、何でその犯人は捕まっていないのか。
一応補足しておくが、もし犯人がPICを殺人の直前に取り外して居場所が分からないようにしていたとしても、この場合はそのPICから警察に『今あの所持者がPICを腕から外している』と連絡が行くはずだから真っ先に疑われるので対策にはならない。
それに、『地曳のPICが行方不明になっている』、『犯人と地曳のPICの電源が切られているかもしれない』、『他の理由で場所の特定ができない』という仮暮先生の言い分についても違和感を感じざるをえない。
さらに、天王野が何であんな場所にあんな時間になくしものを探しに行ったのかにいても謎だし、俺たちが事情聴取を受けていないことも謎だ。もはや、謎だらけだ。しかも、そのどれもが分からないまま。
それに、人間は分からないことがあれば必然的にそれを知りたいと思いたくなる知的生命体だ。逸弛はおそらく、地曳の敵討ちだとかそんなことよりも友だちグループ全員で捜索を楽しもうと考えて、俺たちのそんな感情を見透かした。そして、一言俺たちの心を刺激する言葉を言うことによって一緒に捜査をしに行こうと思いついたのだろう。
「あたしはもちろん、逸弛の意見に賛成だから一緒に行くー」
案の上というか、予想通りというか、火狭は逸弛に抱き付いてその大きな胸を押し当てながら賛成した。というか、火狭は逸弛のいうことなら何でも聞きそうだから賛成するのは当然といえば当然か。
「わ、私も逸弛君の意見に賛成!」
「えー。何、あんたもくるの?」
「火狭さんには関係ないでしょ!」
「別にぃ~。好きにすればぁ~。私と逸弛には全っ然、関係のないことだしぃ~?」
土館も火狭同様に逸弛の意見に賛成らしく、火狭に気持ち悪がられていたが、それでも一緒に捜査するつもりらしい。というか、この二人は逸弛のことが好きだから、そんな逸弛の意見に賛成することで好感度稼ぎをしようとしているだけだろ。と、そう思うことしかできない俺は心が汚れているのか、それとも異常なモテ男に対しての正常な反応か。
「俺も行くよ」
「じゃあ、わたしも」
「……みなさん行くのですか? はぁ、仕方ないですわね。私も行きますわ」
俺も色々と知りたいことがあったので逸弛に向かって賛成の意を表した。すると、そんな俺に続いて海鉾が賛成し、金泉も少し呆れつつもやはり謎の解明をしたいといった様子で賛成した。そして、残すところは遷杜と天王野だけになったとき、逸弛が黙っていた二人にどうするかを尋ねた。
「僕たち六人は行くことにするけど、遷杜君と葵聖ちゃんはどうする?」
「……俺は遠慮させてもらう。今日は少し、野暮用があるのからな」
「……ワタシもやめておく。……あんなもの見ちゃった次の日にそんなことできるわけないし」
遷杜はいつも通りの冷静な対応をして、天王野も眠そうな表情をして、二人ともいたって面倒臭そうにそう答えた。今朝の天王野のおかしなテンションいったい何だったのかと思わせるほど、今の天王野はまさしく天王野というべき、背が引くく小柄の子供っぽい小さな少女になっていた。
まあ、それはともかくとして、どうやら二人は捜査には行かないらしい。二人は逸弛からの誘いを断った後、そそくさと教室を出ていった。そして、遷杜と天王野の後ろ姿が見えなくなったとき、逸弛が残った俺たちに続けて言った。
「二人は行かないみたいだね。それじゃあ、僕たち六人で行こうか。でも、一度に大人数で同じ場所を捜索しても効率が悪いから、僕・沙祈・誓許ちゃんの三人のグループと對君・矩玖璃ちゃん・霰華ちゃんの三人のグループの二手に分かれて行動しよう。目的は、赴稀ちゃん殺人事件の謎の解明ってことで」
逸弛がそう締め括り、遷杜と天王野の二人を除いた、友だちグループの内の六人による地曳殺人事件の謎の解明のための捜索が始まった。しかし、すでにこの時点で結末はほとんど決していたことは誰も知るよしもない。
厳密にいうならば、この世界においてはただ一人を除いて。