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第5話:【装甲将校達】


皆様、こんにちわ~♪


本日は頭痛が痛い暮灘です(^^;


いや、冗談抜きに10月の半ばから急速に忙しくなりそうなので、書けるうちに書いておこうかなぁ~と。




さてさて、今回のエピソードは……


独ソ戦の戦車戦好きな方なら思わずニヤリッとしてしまう名前がチラホラと(笑)


というか、第18機甲擲弾兵師団の第2中隊…まだ殆ど無名とはいえ、どんだけ凄いメンバーが集まってるんだか(笑)


SSが無いうえにまだ41年なのに階級とか配置とか変ですが、そこはそれデウス・エクス・マキナ(ご都合主義)って事でよろしくお願いします(__)




ラストには、クナイセン達の【意外な行き先】がわかる第5話、お楽しみ頂ければ嬉しいッス☆








プロイセン皇国、陸軍バイエルン駐屯地




さて自車の点呼を終えたクナイセンが、辞令を受けに指令部へ出頭しようとした時の事だ。


「貴様! またしても戦車に娼婦なぞを連れ込みよって!!」


「うっせぇなぁ〜。俺はアンタの部下じゃねえって言ってんだろ?」




と耳に飛び込んで来たのは、二人の男の声。

片方は明らかに怒声で、もう片方は露骨に面倒臭そうだった。


「《クルト》、《カリウス》少尉、何を騒いでるんだ?」


すると、プロイセン軍人というよりバイクをかっ飛ばす草レーサーのあんちゃん風、若く見られるのが嫌なのかわざわざ口髭を生やしたようやく青年という表現ができそうな若者は、「救いの神来たり」という表情を隠そうともせず、


「よぉ〜、隊長♪ いい所に♪」


「貴様…!」


青筋を立てたのは、軍服がよく似合うあかにも生真面目そうな典型的なプロイセン軍人だった。




☆☆☆




「カリウス少尉、ウチの小隊副長が何かご迷惑をかけたかい?」


と、生真面目軍人に問い掛けるクナイセン。




とりあえず、彼らを紹介しておこう。


クナイセンが話しかけたのは《オットー・カリウス》少尉。


クナイセンと同じ第2中隊の第3戦車小隊隊長である。


まだ士官学校を出たばかりの新米少尉だが、戦術レベルの機甲戦センスは天性の物があり、クナイセンにも、


『俺と比べる方が間違ってる超逸材。勇気に果断さ、慎重さと我慢強さを兼ね備えた理想的なプロイセン装甲将校』


との事。




☆☆☆




対して口髭青年は《クルト・クニスペル》軍曹。

クナイセン率いる第2小隊の副隊長兼小隊2号車車長だ。


初陣は39年の"冬戦争"で、その時上等兵だったクニスペルは配備されたばかりのIV号戦車の砲手を勤め、2km近い距離でソビエト自慢の多砲塔戦車のキャタピラを撃ち抜き擱座させてみせ、周囲を驚かせただけでなく初戦で10両以上の戦車を撃破し、終戦までに先行量産型のT-34やKV-1を含む37両の敵戦車を撃破し、鉄十字勲章を授与されると同時に伍長に昇進したという武勇伝を誇る。




ただし、この当時から素行はひじょ〜に悪い。


例えば、冬戦争の真っ只中に後方で修理中の戦車に情婦を引っ張りこんでよろしくやってた上、それがバレた時の申し開きが……


『いや〜、人肌で暖をとってただけッスよ。スオミの冬があんなに寒いなんて思ってませんでしたからねぇ〜』


まあ、そんな無茶苦茶なエピソード、言い方変えれば"別の意味で武勇伝(笑)"には事欠かない人物だが、まさか"冬戦争の英雄"を不名誉除隊する訳にもいかず、また始末に悪いのはその破天荒な言動故に特に若者からの人気は高かったのだ。




☆☆☆




本人は有名になることを好んでいなかったようだが、下手に扱えば【クニスペルに憧れて軍に志願しようとしてる無視できない数の若者】をむざむざ失いかねない。


だが、かといってもこんなプロイセン皇国陸軍始まって以来の問題児を引き受けたがる上級士官(尉官以上の士官)は、普通いない。

大抵の士官はわざわざ士官学校を入学/卒業してから軍に入隊するのだから、多かれ少なかれ出世を夢見て上に昇れば昇るほど少なくなる椅子(ポスト)を争う物だ。

所詮、軍とて国家の官僚組織なのだから当然であろう。


そんな世知辛い状態で戦場では修羅の如き力と強さを発揮するが、反面それ以外では立身出世の足を引っ張る行動をする部下など、誰が持ちたがるというのだろうか?




しかし、その普通じゃない人物がいたのだ。


その人物は、徴兵逃れに対する法律より社会的制裁が厳しい(特に国民の規範となるべき"ユンカー"なら尚更)プロイセンにおいて、


『徴兵されてクソ重い小銃を3年も担がされて過ごすくらいなら…』


(ぬくぬく士官待遇で軍隊生活送った方がいいよな〜)


という大変ふざけた理由で陸軍士官学校に入学し、『歩かなくて済みそうだから』という目を覆いたくなる理由でまだ発展途上だった【戦車士官コース】を受講した。


また、ハインツ・グデーリアン機甲総監が戦車を地上の装甲兵力と航空兵力を融合した【電撃戦(ブリッツェン・クリーク)】という攻勢一辺倒に使おうとしていた時代に、相手が同種の機甲戦を仕掛けてきた場合は電撃戦と似たり寄ったりの兵力を使い、擬似撤退しながら敵を磨り減らし、味方の対戦車陣地/隠蔽壕や縦層防衛網まで引き込んで、逃げ切れなくなるとこまで入り込んだ所で一気に逆襲、足を殺して航空機や後方の重砲等ありったけの火力を叩き込み包囲殲滅する


機甲防盾(パンツァー・シュルト)


という機動防御戦術を学生ながらレポートとして纏めて提出している。


ちなみにそのレポート提出の理由が、【あまり芳しくない座学成績の水増し】というのだから呆れる話ではある。


そして現在、その人物は皇国陸軍中尉の階級章を付けていた。


名をキンベル・クナイセンと言う(笑)




☆☆☆




さてキンベル、実は同じく冬戦争に新米少尉という身分で参戦しているのだ。


ただし戦車乗りとして初陣を飾った訳ではなく、あくまで対戦車戦術の実地研究という名目で、実際に戦車に座乗して最前線を走り回る事は許可されなかった。

それでも、


『まあ、給料分の仕事はするか……』


と冬戦争中からいくつもの対戦車戦術を考案し、また【マンネルハイム・ライン】で対戦車防衛網の指導を行ったり、時には後方からの弾着/成果確認と照準修正を行う【前線砲撃統制官】や対地攻撃機の要請や誘導を任務とする【前線航空統制官】の真似事もしたようだ。


ちなみにこの頃のプロイセン軍には上記二つの専属統制官は存在せず、クナイセンは彼にしては珍しい程の熱心さで、その設立を上申したようだ。




☆☆☆




特にマスコミや軍広報部が喜ぶような目立つ活躍は無かった為に、クナイセンの活躍は報じられ無かった(実はクナイセンの実戦成果は、彼の全てのレポートと同じく秘匿された)が、戦後は地味に出世し中尉に昇進していた。


はれて装甲中尉として小隊指揮を任されたクナイセンは、真っ先に今一配属先が決まらず、戦後はたらい回し気味にクニスペルを見つけ、


『ちょうど俺の戦車小隊の副長枠が空いてるんだが』


と声をかけたらしい。

不審に思ったクニスペルが正気かどうかを問うと、


『別に軍での出世に興味はないさ。それより戦場で頼りになる仲間を探してるんだ』


と返したとのこと。

更には追い討ちで、


『因みに俺は自分の戦車にメイドを常時連れ込んでるが?』


その言葉にクニスペルは『プロイセン軍に俺よりバカがいるとは思わなかった』と大爆笑し、副官を快諾したのだった。










**********




「クナイセン中尉、実はこいつ…いや、クニスペル軍曹がまたしても娼婦を営舎どころか戦車に連れ込んで…」


そう苦言申し立てるカリウスだったが、


「最近のサンタは随分とイキなプレゼントを配るのだな? 確かに"夜の女"じゃ靴下には入らない」


クナイセンの言い回しに思わずプッと噴き出すクニスペルに、それをジロリと睨むカリウス。


カリウスの眼光を受けたクニスペルは、素知らぬ顔で笑いを噛み殺していた。


そんなクニスペルをもう一睨みするとカリウスはコホンと咳払いし、


「中尉、こんな時に少々不謹慎じゃありませんか?」


「それもそうですね。確かにこの非常時、たかが下士官一人の素行不良に一々構ってられる状況ではないでしょうね」


クナイセンの切り返しに言葉につまるカリウス。


「カリウス少尉、我々は小隊長の責務を最優先すべきでは?」


不承不承という感じに頷くカリウスを促すクナイセンだが、去り際に


「ああ、クルト」


「はい?」


クナイセンは小さくウィンクし、


「メリークリスマス」




廊下にはクニスペルの大きな笑い声が響いた。




☆☆☆




さてさて、クナイセンとカリウスが中隊長室に入ると、そこで待っていた第4小隊隊長と共に、第2中隊隊長のクリスチャン・タイクゼン大尉より第18機甲擲弾兵師団全体の行き先を告げられた。


「"スロバキア"ですか…」


クナイセンの言葉に、有能さと冷徹さには定評のあるタイクゼン大尉は小さく頷き、


「クナイセン中尉、意味は解るな?」


「……ポーランドは見捨てるという決定ですね?」


端的に要約するクナイセンに、


「"必要なら"いつでも奪還できるという意味さ」


タイクゼンは珍しく冗談でも言うように返した。


「ポーランドと我々プロイセンとの間にはなんら軍事的に効力を持つ同盟なり条約なりは存在せず、またポーランドは"CETO(欧州十字教条約機構)"にも加盟していないのだよ」


「つまり、助ける義理はない……道理ですね。我々ができるのは、ポーランドとの間口を広くあけ、ロシア革命直後のように赤色勢力に焼け出された民衆を"人道を重んじる"【ワイマール解釈】的な見地から受け入れ、彼らが亡命政権を作り、CETOに加盟してから【スターリンの暴虐】を訴え、CETOで対ソ戦が可決される……大雑把に言えば、こんなシナリオですか?」


「まあ、CETO全体ならそんなところだろう」


タイクゼンは拍子抜けするほどあっさり肯定し、


「だが、我々は一段早くアカと交戦することになるだろう。だからこそ、我れらが【パンツァー・グラネディア】はスロバキアに向かう。クナイセン、そのココロは?」




☆☆☆




(やれやれ、食えない人だな〜)


クナイセンは内心で苦笑する。

自分もさして年齢を重ねた訳じゃないが、


(確かに第3/第4小隊隊長は若いからな…)


第1小隊隊長を兼任してる中隊長のタイクゼン大尉は戦場の洗礼を浴びたのは36年の"スペイン内乱"という猛者で、自分さえも冬戦争で戦場の空気を吸った。


しかし、まだ硝煙の匂いが染み付いてない新米隊長は……


(小隊指揮や練度あげで手一杯ってとこだろうな)


だが、それじゃあいけない。


(俺達が戦う場所は、阿呆な先達のお陰で政治的に複雑怪奇な迷宮になってるんだ)



そういう場所では常に自分が【誰と、何と、何故に】戦ってるかを考えねば危うい状態になる事がままある。


友軍だと思っていた他国の部隊が突然、あるいは何かの拍子で裏切り、自分達を窮地に陥れたり、あるいは自分達の首を手土産に敵軍に投降したりなんて話は、歴史上では珍しくも何ともない。




中隊長は、おそらく自分をダシにして【東欧州の生々しい現状】を噛み砕いた形で理解させた上で、


("有益な会話"って物の引き出し方を、若手に教えようとしてるんだろうな…)


そう判断したクナイセンは、


「理由は主に二つ。一つは額面通りに我が国の"保護国"であるスロバキアの純粋な防衛と……」


一呼吸置いてから、


「もう一つはズバリ、【チェコとハンガリーへの牽制】でしょうね」







次回へと続く






皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


クルト・クニスペルにオットー・カリウスなんてティーガー・マイスターのウルトラ・エースに、ノルマンディで壮絶な最後を遂げたクリスチャン・タイクゼンとかなり無茶な面子を揃えました(笑)


ようやく、萌え抜きにした架空戦記物っぽいエピソードが仕上がりました。


というか5話にして、ようやくヤローだけのエピソードって(苦笑)


PPGを書く段階で色々調べ直してるのですが、恐ろしいことにクニスペルの【娼婦を戦車に持ち込みエピソード(笑)】は創作ではなく混じりっ気なしの実話だったりします。


こんな人物だからこそ、クナイセンとは妙に馬が合うんでしょうね~(^_^;)




いよいよスロバキアへの遠征が決まりましたが、クナイセンの言う"牽制"の意味とは?


そして、不穏というより不安定なチェコ、ハンガリー…物語は少しだけシリアスになるかもしれません(^^;




そんなこんなで混迷する欧州情勢の一端が見える次話にまたお会いできる事を祈りつつ(__)




追伸

もし気に入って頂けたなら、ポイントとかを入れて貰えれば幸いです(__)





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