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第19話:【冬戦争…それは"三人"が出会いし戦い】


皆様、こんにちわ~♪


最近は、もはや土曜しか昼間のアップが出来なくなりつつある暮灘です(^^;




さてさて、今回のエピソードは……




まんまタイトル通りになってしまいますが、今回のエピソードはクナイセンとルーデル閣下、そしてレニの師匠とも言える人物が出会う、"冬戦争"がテーマになっています。


まだ"現在"では、【戦争屋】という側面を見せてないクナイセンが、僅かに見せる軍人としての側面……


書いてる本人が言うのもなんですが、クナイセンは作者的にも意外なタイプの軍人で、少なくともルーデル閣下のように分かりやすく"英雄"になれるタイプじゃないです。


というか戦い方が完全に"悪党"だし(;^_^A




PPGでは今のところはレア(戦記物の筈なのに……)な戦闘シーンもチラッと出てくるエピソード、お楽しみ頂ければ嬉しいッス☆








プラハ事業団基地にて食事を終えたばかりのルーデル大尉の元にフラりと現れたのは、冬戦争以来の副官で僚機のパイロットの《ヘルムート・フィッケル》中尉だった。


「ダンナ(フィッケルはルーデルをこう呼ぶ)はイワン達がポーランドで派手に暴れてるお陰で、チェコがプロイセンの保護国になったって話は知ってるよな?」


若くハンサムで陽気、オマケに人当たりのいいフィッケルは中々に情報通だった。


特に抜群の人気を誇る基地の後方事務方勤務の女の子達からの情報は高い精度を誇っていたのだが……


「うむ」


「実はその流れで援軍に来た【機甲擲弾兵師団】の中に、中々面白くも懐かしい奴の名前を見つけたんでさぁね♪」


「ほう……何奴だ?」


「【キンベル・クナイセン】」


フィッケルは実に楽しそうに、


「冬戦争の"影の立役者"、【皆殺しのクナイセン】でさぁ♪」










**********




「それは確かに、懐かしくもまた興味深い名だな」


微かに頬を緩ませるルーデルだった。


ルーデルにせよフィッケルにせよ、実はクナイセンとは"冬戦争"にて少なからず縁があった。




当時、プロイセン皇国陸軍は《ハインツ・グデーリアン》機甲総監が提唱した【電撃戦(ブリッツェン・クリーク)】を新たな"攻勢ドクトリン"にすべく、より戦略/戦術的な完成度を引き上げる為に冬戦争で様々な試行錯誤を繰り返していた。




特に尽力していたのは主力となる戦車と機動歩兵、スペイン内乱で実力を示したスツーカ(急降下爆撃機)隊に装甲化(機械化/自動車化)で高い機動力を獲得した砲兵隊との更なる密接で有機的な連携であった。

つまるところ、


【高速化した戦場に対し、如何に短時間で局所的な火力集中を行えるか?】


の改良と発展だ。

第5話を始め、クナイセンが【前線航空統制官】と【前線砲撃統制官】の設立を彼らしからぬ熱心さで上申した事は、何度か書いたかもしれない。


それはやはり、彼が相当に必然性を感じたからだろう。

その時の上層部からの返答は……


『少尉の要求はよく分かった。ならば、自らその必要となるスキルやノウハウを確立し、マニュアル草案を作成してみせよ』




新米少尉に対する待遇としては破格も良いとこだが、クナイセンとしては目の前が暗転したに違いない。


オマケに彼が上申しに来るのを待っていたかのように、砲弾搭載数減らしてその分通信機材が強化された【III号"指揮"戦車】が用意されていたのだから、何を(いわ)んやである。




☆☆☆




軍の上層部は自分を遊ばせる気は無いことを思い知ったクナイセンであったが、言い出しっぺである以上は断る訳にもいかず、砲手兼従兵のレニを連れ立って冬戦争の主戦場である【マンネルハイム・ライン】を縦横無尽に駆け巡った。


戦車が入れない細い道にはキューベル・ワーゲンやアメリカ直輸入のジープ等の軍用車、それが駄目ならケッテンクラートやバイク、時には馬で最悪は徒歩でマンネルハイム・ラインを渡り歩いたりもした。


クナイセンやレニも大変だったろうが、もしかしたら一番大変だったのは、当時はポータブル・タイプと言っても冗談みたいな重さと大きさがあった通信機を背負いつつレニやクナイセンに随伴した"通信兵"だったかもしれないが……


何しろクナイセンは成金と言えどユンカー、自分で明らかにハードな重さの無線機なんて持つ筈もなく、またレニに至っては通信機が背負えるサイズ(レニが小さすぎ、通信機が大きすぎた)じゃなかったのだから。




ともかく、クナイセンはマンネルハイム・ラインのあらゆる場所で、時には対戦車陣地やブンカー(トーチカ)構築のレクチャー等も行いながら、後方の砲兵隊やスツーカを中心とした地上攻撃機隊に指示を出し続けたのだ。




そのクナイセンの姿を見て、或いは実際の指揮を受けた者は彼への嫌好はともかくとして、


【制服着ただけの成金ユンカーあがりのお坊ちゃん軍人】


と侮る者は消え、また無能と判断する者もいなくなった。


何故なら、クナイセンはどれほどの激戦だろうと、どんな状況でも着実に確実に、そして誰よりも効率よくイワンへと味方の火力を誘導した。


そしていつの間にかロシア人に言わせれば、一つの場所に留まらない正体不明の【魔女の大釜の薪くべ係】……味方からは【皆殺しのクナイセン】の呼び名が静かに、だが着実に広まっていった……









**********




勿論、その文字通りの強行軍の中には、いくつも注目に値するエピソードがあった。


例えばそれは、雪崩のような勢いと数で押し寄せる赤軍相手に、少数精鋭で立ち向かうフィンランド最高最強の【独立狙撃部隊】と共同戦線をはった時の事だ。




☆☆☆




《シモ・ヘイヘ》という人物を皆さんはご存知だろうか?


マンネルハイム・ライン、いやスオミの深き雪の中に潜む【白き死神】……


帝政ロシア時代に作られた古い狙撃銃を相棒に、史実で1年に満たぬ"冬戦争"だけで公式には505人もの赤色ソ連兵をスナイピングだけで仕留めた、未だにその狙撃スコアは破られてない【伝説の人類最高の狙撃手】だ。




ヘイヘに関するエピソードは、いずれ機会があれば詳しく語りたい。


ほんの短い間だったが、レニに【狙撃のなんたるか】を言葉ではなく自ら放つ弾丸で教えたのも、またヘイヘだったのだから……




だが今は"冬戦争"においても名だたる激戦、【コッラの戦い】にスポットを当ててみたい。


ラドガ湖北部を巡る一連の戦い……そのクライマックスにおいてはクナイセンが関わっていたと言ったら、皆さんは驚くだろうか?




☆☆☆




端的に言えば、ヘイヘは強すぎた。

いや、正確には"ヘイヘ達"だ。


雪に紛れる純白のギリースーツに身を包んだヘイヘ達32名の選りすぐりの狙撃手達は、コッラの戦いにおいてとある丘陵を守っていた。


そして、彼らはそこに攻め寄せた100倍以上赤軍……ソビエト式なら歩兵旅団規模になる4000名の敵と対決し、激戦の末に丘を守りきったのだ。


まるで陳腐な英雄譚かあるいはB級戦争アクション映画のようだが、これは紛れもない"史実"だ。


そうであるが故に、ヘイヘ達の守る丘はソ連兵から【殺戮の丘】と呼ばれていたのだった。




☆☆☆




しかし、ここから先が史実と少し似ていて違う。


ヘイヘ達の粘りに業を煮やした赤軍は、圧倒的な数と火力でそれに対抗し、一気に殲滅しようと目論んだ。


いわゆる【4000で駄目なら40000で押し潰せ】という命令だ。




流石に40000は無理だったが、最盛期には街一つ潰すのに軍団規模の戦力を投入したソ連軍だ。


ヘイヘ達32名を潰すのに、戦車や対地攻撃機を含め、かき集められた兵員は実に15000名……しかし、ソ連というかスターリンにとっては数字の問題でしかなく、より重要なのはヘイヘの首を如何にして取るかだった。


戦力差はそれこそ、オーバーキルなんてもんじゃない。

倒すべき敵の500倍の戦力投入なんて、軍事的な常識から考えれば前代未聞だろう。











**********




そして、軍上層部から明らかに意図的にリークされたその【バカげた情報】を、ちょうどコッラ川を渡ったとこで聞いたクナイセンは……


『やれやれ……軍部は、そんなに俺に超過労働させたいのか?』


そう一つボヤいた後、早速作戦の立案に入った。


それはクナイセンが冬戦争で用いた戦術の集大成であり、また基本は極めて単純な作戦だった。

その骨子は……


『せっかくですので、勇気あるスオミ狙撃兵諸君には、"(デコイ)"になってもらいましょう』


それを面と向かってヘイヘ自身に告げたのだから、驚くべきか呆れるべきか?


いや、それ以前に嵐の前の静けさと言うべきなのだろうが……


小康状態とはいえ最前線中の最前線、【殺戮の丘】になに食わぬ顔でやって来るクナイセンも相当、"コワレタ"部類の貴族士官なのだろう。




『若者よ。我々に狼を引き摺り出す"縛られた羊"になれと?』

感情がどことなく希薄に感じられるヘイヘの言葉にもクナイセンは動じる事なく、


『はい。その代わり狙撃銃で貫けない硬い獲物はプロイセンが、全て引き受けましょう』


そして涼しい顔でこう繋げた。


『あっ、そうそう。小官も【殺戮の丘】に"前線観測発令所"を設営させて頂きますよ? 【白き死神】が選んだ場所なれば、さぞかし敵からは見えにくく我らからは敵がよく見えるのでしょうから……まさきに砲爆撃の統制にうってつけでしょうから』




『若いの……それでもイワンは押し寄せてくるぞい?』


ヘイヘの重い……多くの赤色ロシア兵を葬ってきた故の言葉に、クナイセンはまるでその重さを感じぬように、


『委細承知』


ただその言葉だけ返したという。




☆☆☆




別にクナイセンのビッグ・マウスとかでは無かった。


というより、十分に勝算あっての発言だった。


何しろクナイセンは、そう言えるだけの戦力的な確約(バックボーン)があったのだ。


一つは、【最強の前線装甲指揮官】の呼び声高いスペイン内乱の英雄の一人、《エルヴィン・ロンメル》少将(当時)率いる【独立増強機甲旅団】、通称【ロンメル突撃旅団】の協力を取り付けた事だ。


プロイセン型編成の旅団は元々ソビエト型編成より頭数が多いが、このロンメル突撃旅団が特に"増強"されてるのは戦車部隊で、当時は最新鋭のIV号戦車を標準編成の機甲師団の定数並に配備されていたのだ。


そして、もう一つは……




☆☆☆




『ほう……作戦立案者がわざわざ航空支援隊にまで顔見せに来るとは、随分と物好きな少尉だな?』


『いえ、ルーデル中尉。俺は別に後方の作戦立案者ではなく、前線航空統制官……自分の指示で地獄へと飛び込む者の顔を見たかっただけですよ』


そう、ルーデルが預かるスツーカ中隊だった。

正確には、ルーデル急降下爆撃機中隊が所属する飛行大隊だった。


『ふん。面白い奴だな……クナイセン少尉、お前さんは俺に何を見せてくれるんだ?』


ルーデルの言葉にクナイセンは微かに笑むと、


『イワンには魔女の大釜に至る飛び込み口を。中尉とスツーカ隊には"最良の狩り場"への道案内を』




クナイセンの言葉に、ルーデルがなんと答えたのかは残念ながら残っていない。


だが、その日は応接室から漏れるほど大きな、そして上機嫌なルーデルの笑い声が聞かれたという。










**********




戦い自体は、激しくも短く……かつ、あまりに一方的な物だった。


30人と少々の兵士を数に任せて殺す事しか頭にない15000名の赤軍に対し、 プロイセン軍はその15000人を血祭りにあげる為の準備を重ねていたのだ……


もはや、その時点で勝負は見えていた。




☆☆☆




『さて【フェンリル(この作戦でのクナイセンのコードネーム)】、我々はどこから刈り取ればいい?』


『蛇と同じく、まずは頭(先頭集団)から潰してください。イワンの最大の武器である突進力を奪います』


『いいだろう。しっかり獲物への誘導を頼むぞ』


『ヤボール。【ヴィーテンデヘール(スツーカ隊)】によき猟果があらん事を』


『勿論だ。今日は大猟の予感がする……喜ばしいことだ』




☆☆☆




後は細かく書くことは無いだろう。


クナイセンは航空機隊の誘導と、急降下爆撃の後に間髪入れずに行われた重砲の矢継ぎ早の弾着の修正を危なげなくこなした。


奇襲となったスツーカ隊の爆撃と、絶妙のタイミングと位置で行われる砲撃により完全に混乱し、突撃陣形を崩されて突破力を失った赤軍に対し、更にロンメル率いる完全編成の増強機甲旅団が横から殴りかかったのだ。


そして赤色機甲部隊は壊滅した。


また、例えこれらの罠を抜けたとしても、尚も丘の前にはクナイセンが工兵隊総出で突貫工事をした磁気吸着式の対戦車地雷原が横たわり、その後ろにはヘイヘ達の狙撃銃が控えていたのだった……







次回へと続く







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m




クナイセンにルーデル閣下、そして【もう一人の人外】ことヘイヘの登場は如何だったでしょうか?(^^;




史実では出会う筈の無かったルーデルとヘイヘが直接顔を合わせてませんが同じ戦場、【コッラの戦い】の地に立った……


小さくではありますが史実とは確実にずれ、【殺戮の丘】は【大量虐殺の丘】へと名を変えた……



そして、それを演出したのはクナイセンだった。


そんな感じのエピソードでした(^^;




そしてあの戦いを知る者は、クナイセンの名を聞くと【スオミのハンバーガー・ヒル】を思い浮かべる……


微妙にPPGの戦いの伏線ですが、果たしてこれが如何に繋がるか?


更新ペースは上がりませんが、また再び次回にて皆様にお会いできる事を祈りつつ(__)





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