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第10話:【機甲師団】


皆様、おはようございま~す♪


本日もアップ時間が不規則な暮灘です(^^;


というか、メンテらしいんで慌ててアップです(笑)




さてさて、今回のエピソードは……


実は今回、キャラは出てきません(^^;


何というか、今までなんとなく書いてきた


【機甲擲弾兵師団】


についてきっちり、特に何が普通の機甲師団と違うのか?とか書いておこうと思いまして(^^;


なので、今回は陸軍の編成やら何やら、わりとややこしい話が出てきますが、朧気ながら【PPGプロイセン(?)】の軍事力が見えてくればいいなぁ~と(;^_^A



そんな感じのエピソードですが、楽しんで貰えれば嬉しいッス☆








史実では、VI号戦車【ティーガー】はその履帯の幅から鉄道輸送は難しく、輸送の度に一々履帯を交換していたようだが……


どうやらPPGのプロイセン皇国ではベルリン・オリンピックを契機に【将来的な大規模/高速輸送時代に備えて】という名目で港湾や空港、道路に並んで鉄道の拡張工事が【トート機関版国土改造計画(笑)】が行われてたらしく、問題なくティーガーが搬入できるようだ。


どこぞの頭目、【きょぬー魔女】の異名持ちの博士があまりにあちこちで暗躍し過ぎる為に組織の本質が見えにくくなりがちだが、少なくとも先代まではトート機関は真っ当な大規模公共工場の請け負い機関……だった筈(汗)




もっとも、そのティーガーも第18機甲擲弾兵師団の中でも配備されてるのは、師団司令部直轄独立中隊と師団連隊の第1/第2大隊だけ(第3/第4大隊はIV号戦車)なのだが。


実際、ティーガーはまだ現場(実戦部隊)で初期トラブルを洗い出す"先行量産型"の配備が去年の暮れに始まったばかりの最新鋭戦車で、各工場が24時間フル操業(8時間3交代シフト)してるとはいえ、その生産数はまだ先行量産型を含めても1000両に届いていない。


当然、電撃戦を行う通常の"強襲機甲師団"には1両も配備されておらず、機動防御を行う"機甲擲弾兵師団"のみに供給されておらず、またその機甲擲弾兵師団さえも第18師団のように敵の攻撃を真っ向から受け止める正面防御を担当する1〜2個戦車大隊をティーガーにするのが限界だった。








**********




ちょうどいい機会なので【強襲機甲師団(Sturm Panzer Division:SPD)】と【機甲擲弾兵師団(Panzer Grenadiere Division :PGD)】の違いを書いておこう。


そもそも、その組織/名称改編は、1939年の"冬戦争"の戦訓に起因していた。


そう、圧倒的な物量と政治将校の恐怖から死兵になりやすい赤軍兵士……

この二つの要素の相乗効果から生み出される【後先考えない圧巻の突破力と蹂躙戦術】を誇るスターリンの軍勢をどう迎撃するか?を研究した結果が反映されたのだ。




☆☆☆




強襲機甲師団(SPD)とは、史実で言う【機甲師団】と考えて概ね正しい。


発想としては第一次大戦に活躍した、塹壕線の防御ポイントの低い場所を浸透突破し迂回し敵の急所を攻撃する【Stostruppen(シュトース・トゥルッペン:突撃隊)】を機械化したものと考えていい。

だが、装備が史実の同時代ドイツに比べても格段に装備が強化されている。


最大の特徴は【装甲化】、他の国で言うところの"自動車化"である。


主力兵器であるIV号戦車を中心に、第1線級部隊なら歩兵すらもプロイセンorアメリカ製のディーゼル・ハーフトラックが兵員輸送用に配備されている。


このハーフトラックも81mm(プロイセン表記は"8cm")〜120mm級の迫撃砲やロケットランチャーを搭載した火力支援型(パンツァーヴェルファー化)や、20mm機関砲や12.7mm(同じくプロイセン表記では"13mm")機関銃を複数搭載した対空/地上掃射型等様々なタイプが量産されていた。


また、砲兵部隊は10.5cm自走砲【ヴェスパ】や15cm(実際には米軍の155mm榴弾と砲弾は共通)自走砲【フンメル】等も配備され自走砲化されている。


加えて歩兵や砲兵部隊には旧式化したIII号戦車に余剰となったIV号戦車の旧75mm 砲(75mm43口径長砲の事:最新生産/近代化改修済みのIV号戦車は75mm48口径長砲)を固定搭載した【III号突撃砲】が対装甲車両として、sIG15cm重歩兵砲をオープントップ・マウントした車両が【III号重歩兵砲】として供給されているのだ。


また、変わったところでは突撃砲等と同じくIII号戦車の車体を利用して四連装20mm機関砲を搭載した対空戦車【クーゲルワーゲン】が開発され、配備されていた。




このようにとことんまで機動力を追求されている【電撃戦に特化】した師団だが……

やはり予算がかかるので、完全編成/装備の"強襲"と付くのは教導隊を兼ねた最精鋭の【第1強襲機甲師団】から始まる第7強襲機甲師団までの7個師団までしかない。


第8〜第16迄の師団は、戦車を主軸にした【機甲師団】ではあるが野砲が自走砲ではなく牽引式だったり兵員輸送が普通(非装甲)の軍用トラックだったりする(他国なら立派な機甲師団だが)し、或いは自動車化があまりなされてない、他国では一般的な機動力の劣る【歩兵師団】だった。。


また、予備役招集で補うこと前提の定員割れしてる師団も多い。









**********




逆に【機甲擲弾兵師団(PGD)】とは、普通に言えば【火力増強師団】とでもなろうか?


そもそも擲弾兵(Grenadiere)とは、プロイセンではフリードリヒ兵隊王(フリードリヒ大王と知られるフリードリヒ2世の父)の時代から擲弾、今で言う手榴弾を投擲する部隊として存在していた。


特に大柄な兵士が厳つい鎧を身につけ投擲を行う【装甲擲弾兵】は特に見栄えよく有名だったようだ。


プロイセン国民の擲弾兵とは、【大きく屈強で勇敢】……


オチは見えたと思うが、プロイセン陸軍が"冬戦争"の戦訓を生かした1941年度の組織再編の際、新編成される火力重視の防衛師団を【火力増強防衛師団】とかにせず【機甲擲弾兵師団】としたのは、完全に軍が国民向けた露骨な人気取り……


つまり【ティーガー】を【現代の機甲化された擲弾兵】に例えたのだった。




☆☆☆




その特徴は、第一に火力。


IV号戦車を遥かに上回る火力と防御力を誇る【ティーガー】を中心に、大抵は牽引砲や固定砲だが、大量の火砲や地対地ロケット弾、或いは対空機関砲が配備されている。


また、歩兵部隊も火力増強がなされ、中隊毎にM2ブローニング12.7mm重機関銃と8cm迫撃砲を扱う火力支援小隊が付き、小隊ごとに火力支援分隊が配されてMG34汎用機関銃(正確にはプレス加工部品を多用してコストダウンを図った史実のMG34/41Sと呼ばれるモデルに近い)とアメリカから大量輸入されたM1"バズーカ"配備されている。


また、特徴的な装備として、分隊単位で強力な火器……

【ズデーテン併合】と【スロバキア独立】で緊張したチェコとの関係改善すべく、大規模商取引の一環として30万丁の売買契約が結ばれ輸入された【ZB26分隊支援機関銃(プロイセン名"MG26軽機関銃")】と、驚いたことに大日本帝国陸軍装備の【89式重擲弾筒】を小改良してライセンス生産化した


【GW39/5cm擲弾筒】


を装備していた。

"GW"は【Grenad Werfer】の略で、意味はまんま"擲弾投射器"だ。




この擲弾筒の生産には面白い逸話があり、元々スペイン内乱で交戦したレッド・ロシアン・アーミーのしぶとさでへきへきしていたプロイセン軍は、従来より効率的に敵歩兵を駆逐できる兵器を求めていた。

そこで世界中から、


【個人携行/単独使用できる掃倒火器】


という条件しか与えず集めてみたところ、総合点でトップに躍り出たのが、"89式重擲弾筒"だった。


プロイセン陸軍は直ちにライセンス生産契約を結ぶが、照準が目分量である事と二重装填による事故が多発してる事を知り、メイン・コントラクターになってたクルップ社に折り畳み式の簡易照準機と二重装填防止機構の搭載を指示。


また、89式は非常時には手榴弾を簡易擲弾として投射できる能力を持っていたが、そもそも日本陸軍と規格も手榴弾自体も違うプロイセン陸軍には無意味な機能でオミットし、その分の部品数を削減してる。


また、日本製擲弾の品質がイマイチだった為にプロイセンは独自生産を始め、爆発と同時にパチンコ球のような鉛球を飛散させる対人擲弾以外にも成形弾頭を持つ対軽装甲弾、鉛球の代わりにペイント・ラバーボールを仕込んだ訓練弾、発煙弾や照明弾等様々な擲弾が制作されてるようだ。




GB39は"冬戦争"に試験的に実戦投入されたが結果は上々だったらしい。


そしてプロイセン陸軍は【復活した現代の擲弾兵】、【機甲擲弾兵師団】の名をアピールするに最適な歩兵用装備として、【GB39擲弾筒】を大々的に採用したのだった。




☆☆☆




他にも師団には様々な特徴がある。


例えば、全ての陸軍師団レベルの中で最大規模の"工兵"連隊の存在だ。




20世紀に入って規模の大きくなった【近代陸軍】は小さい規模の部隊から大雑把に言うと、


分隊

小隊(2個分隊以上)

中隊(2個小隊以上)

大隊(2個中隊以上)

連隊(2個大隊以上)


この上に"団"という単位が来る。

国や時代により規定が違うので、一概には言えないが……


兵科別の"大隊"が複数集まったのが【旅団】、兵科別の"連隊"が複数集まったのが【師団】となる。


大雑把過ぎるが、この時代(史実の第二次大戦前後)だと普通は、


旅団(兵員:1万人前後〜1.5万人)


師団(兵員:2.5万人〜3.5万人)


この師団が2個以上集まると【軍団】、軍団が2個以上集まると【軍】という単位になる。


よく【○○方面軍】という表記が近代以降を扱った戦記物に出てくるが、これは語義通りに捉えるなら、2個軍団以上の陸軍兵力がその方面に存在してるという意味だ。


また、言葉遊びのように聞こえるかもしれないが……

陸軍に関しては軍団以上の規模がないと軍とは呼べない。




勿論、旅団で軍団を編成する事はできるが、旅団は小規模な集"団"であるからこそ色々小回りが効き、それが最大の行軍メリットになる事も多いのであまりやる意味はないだろう。




☆☆☆




当然、機甲擲弾兵師団(PGD)にも戦車/歩兵/砲兵等の各緒兵科"戦闘連隊"は存在するが、連隊単位で最大の人員を誇るのは戦闘連隊ではなく"工兵"だった。


工兵というと、戦争映画等(映画で活躍が描かれること自体が珍しいが)では味方が進軍する時に地雷原を爆破して突破口を開いたり、或いは川に橋をかけ進撃路を作ったり逆に敵が攻めいってきた時に橋を爆破したりするのだが、PGDの工兵は少し違う。




その内容は古めかしく言うなら"築城"……

現代戦で言うなら【野戦における防衛線の構築】にある。


第一次大戦まで野戦防衛線といえば塹壕線に機銃座の設置、有刺鉄線を使った対歩兵用鉄条網の敷設に砲兵陣地作り、更に前線司令部の設営と相場が決まっていたが、今は少々異なってきている。


そう、赤色戦車部隊に対抗する為の対戦車バリケードの設置や対人/対戦車地雷原の敷設等もそこに含まれてくるのだ。




☆☆☆




その為のPGDの工兵連隊には十分な兵員に加え、


【武装無き決戦兵器】


とまで史実では呼ばれたブルドーザーをはじめクレーン車等数々の重機をこれでもかとばかりに配備されていた。


その実力は凄まじく【小さな街なら一晩で出来る】とまで噂される程だ。




加えてPGDに限らずプロイセン皇国工兵隊は練度が恐ろしく高いのだが……その秘密は、このエピソードの冒頭に出てきた【トート機関版国土改造計画】だ。


例えば、史実ではあまり誉められた労働力の集めかたをしてないが……


PPGプロイセンの場合、実は工兵隊をいくつもの公共事業に総動員しているのだ。


無論、練度上げだけでなく大量増員した新兵の訓練や新装備/新工法の実験等も同時に行なったらしい。


また、何処かの島国の"SDF"のように災害出動なんかも繁盛に出動し、冬戦争ではマンネルハイム・ラインの構築に遺憾無く実力を発揮して文字通り【縁の下の力持ち】の役目を果たしきった。




☆☆☆




何やらトート機関と軍部の癒着を如実に語るエピソードがあったような気もするが……ともかくプロイセン機甲擲弾兵師団はこのような組織だった。


ただ、それだけにまだ編成された師団は少なく、皇都ベルリンを守護する初のPGD【第17機甲擲弾兵師団】を始め、クナイセンの所属するバイエルンを拠点とする【第18機甲擲弾兵師団】、それ以外には今のところ第19/20機甲擲弾兵師団しか存在しない。



機動力こそないが戦車を主役とする膨大な火力と、規模も機材も練度も高い工兵隊が構築する防衛線に裏打ちされた防御力……


この二つを備えた師団が今、戦場へ向かおうとしていた……







次回へと続く






皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


実は史実のナチス・ドイツとはかなり内容が違うプロイセン陸軍は如何だったでしょうか?(^^;




実は今回のエピソードってかなり小さい伏線が入っていて、日本原産の擲弾筒とか強力な工兵隊の存在とか、あるいはトート機関と軍部の癒着(笑)とか(^^;




キャラがまったく出てこないってのは珍しい上に、ややこしい話が多いので読者の皆様の反応が心配ですが、ご意見ご感想を頂けたら幸いです(__)




それでは、また皆様に次回でお会いできる事を祈りつつ(__)





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