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つつがなしや  作者: 北見
序章
1/1

000 プロローグ

 見渡す限り、緑、緑、緑。

 見上げれば、眼にまぶしいくらい燦燦と照りつける太陽。

 淡い色彩の水色の空と、途切れ途切れに浮かぶ雲。


 その水色と、地を覆いつくす濃い緑のコントラストが綺麗に映えていた。もし手元に携帯を持っていたら、一見して、すかさずカメラに納めていただろうと思える景色だ。しかし、生憎として今は手元に携帯がなかった。それに気が付いたのは、つい先ほどのことだ。


「というか、ここ何処だし。」


 誰に言うわけでもなく、独り言つ。

 気分は未だ覚めやらぬ夢の中のようだったが、果たして今までにこれほど現実的な夢をみたことがあっただろうか。それとも、自分で気が付かなかっただけで、実は隠れた才能――たくましい想像力――があったのかもしれない。そして、このタイミングでその才能が開花した。


 パンパカパーンと気の抜けるようなファンファーレが鳴り響き、カラフルな華が花開く二次元の映像が、脳裏を過ぎる。うん。俺の想像力なんて精々こんなもんだ。


「どうしたもんかなぁ。」


 大学受験の浪人時代に東京へ上京してから早5年。すっかり身に付いた独り言癖はなかなか抜けない。ぽりぽりと頬掻きながら、この状態に陥る前の自分の記憶を遡ってみるが、地元行きの新幹線に乗っていたところまでしか覚えていない。


 学生生活を送った思い出のアパートを引き払い、就職先の近くに新しく借り入れたアパートに引っ越したのが昨日。


 荷物の整理もそこそこに、最低限の荷物を携えて新幹線に飛び乗ったのが今朝。


 上京したばかりの頃は、家具やら日用品やらを全て現地調達したおかげで引越しの作業は比較的楽だった。今回は、5年間使い古した家具その他諸々を業者に頼んで引越した訳なのだが、これが大変だった。こんな狭い部屋に一体どれだけ詰め込んでいたんだというほどの荷物。大学の友人達の部屋に比べたら数倍綺麗で物が少ないと思っていたのに、それでも多かった。早い話が、引越しの作業を甘く見ていたのだ。


 そんなこんなで徹夜で荷物を詰め、引越し業者に受け渡し、不動産業者との立会い、引越し先での荷物受け取り、入居先の契約内容確認、等、等。最低限寝る場所を確保したところで、気が付いたら寝ていた。目を覚ました時には、予め購入していた新幹線の時間が迫っていて、慌てて荷物を抱えて新居を飛び出した。睡眠不足の身体に新幹線の適度な揺れと騒音が気持ちよくて、座席につくなり直ぐに寝る体勢に入った。そこまでは覚えている。ということは何だ。これは夢なのか。


 いまいち納得がいかず、無意識に首を傾げるがいつまでも訳の分からないところで立ち尽くしているわけにもいかない。都会に慣れきった意識は、所々土の付いた草に触れて汚れることを不快に感じるが、仕方ない。


 視界を覆いつくす濃い緑の一部に手をかけ、両手で掻き分けると、足を一歩踏み込んだ。


行き当たりばったりで始めてしまいました。

よろしくお願い致します。

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