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英雄武装士  作者: sora
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第七話  神代機関

 夢を見た。まだ、■■■が生きていた頃の夢だ。


『ねえ、真司。あんた将来何になりたい?』


『将来? 何でそんな事聞くのさ?』


『いやあ、真司がどんな夢を持っているのか興味があってさ』


『うーん……正直わかんないな』


『夢が無い奴だな―』


『うっ……そう言う■■■はあるのかよ。夢』


『私? 私はそうだなあ……真司が幸せに生きることかな?』


『はあ? 何だよそれ』


『むっ、何だよとは失礼だな』


『失礼も何も、それは夢と言えるのか?』


『言えるさ』


『……何でさ』


『他者の夢が、自分の夢と同じって事もあるだろ? だからこそ、私の夢はお前の幸せだ真司』


『……確かに、他者の夢が自分の夢と同じって事はあり得るかも知れないけど■■■が言っている夢は少し違うかな』


『えー』


『えー、じゃ無いよ。■■■の夢は俺の幸せって言うけど、それは■■■の夢じゃない。■■■の夢は、■■■自身が探し、見つけるモノだ』


『……そうかねえー』


『そうだよきっと』

 

 すると、■■■はいきなり後ろから俺に抱きついてきた。


『ちょっ■■■?』


『ふふっ、大好きだよ真司。私の可愛い可愛い真司』


『……高校になってまでそんな事言うのは■■■ぐらいだ』


『そうか? 他にも居ると思うけどな―』


『いねえよ。絶対』






「う、ん……」


 意識が覚醒してきた。てか、えっと何で俺寝ているんだ?


 取り敢えず俺は上半身だけを起こした。


 未だぼやける頭を回転させながら、周りを見渡してみる。


 現在俺は医務室みたいな部屋にいる。唯、施設みたいな場所なのか、どこか機械じみている。


 えーと、は確か俺は、アイス買いに行って、その帰りにマリスに襲われて……。


「俺……そうだ……何か、騎士みたいな格好になって、聖剣を使って…ん?」


 そこ迄考えて、俺はふと思った。


 何であの剣が聖剣? 何て思ったんだ?


「えっと、確かあの剣の名前は……」


 えーと。


「え、え…え……え、え」


 ……出てこない!


 何だこのもどかしさは! 出そうで、出ない!



 ……ま、まあいい。それは今は置いておこう。



 そう思い、頭をかこうと腕を伸ばそうとしたら、


「うん?」


 今更のように、何か両手首をきつく縛られているような、そう思い俺は両手首を見下ろしてみる。


 ……何か電子手錠みたいなものでロックされている。


「……はあ!? いや、何だよこれ!? 何で俺電子手錠されているの?」


 何だよ一体! 俺なんか悪いことした!?


「意味わからねええええええええ!!」


 思わず絶叫してしまった俺は悪くないと思う。


「……えと、柊君?」


 唯、その叫びを橘に聞かれたのは、どうかと思うかも知れないが。


「たっ、橘?」


「うっうん」


 何とも言えない沈黙が俺たちを包む。


「えっと、その……大丈夫?」


 先に沈黙を破ったのは橘だ。……何か申し訳なさそうに言っている。


「いや、お願い謝らないで。お願い見なかったことにして」


 何かものすごく恥ずかしい! 

 

 その後少し時間を置き、俺と橘は、話を再開させた。


「で、これは何なんだよ。まさか人生の中で手錠を付けられるなんて思わなかったぞ」


 俺は、電子手錠が付けられた手首を見せて言った。


 この電子手錠は、手首をがっちりと固定して拘束しているものなので、正直痛い。


 それを見た橘は、申し訳なさそうな表情をした。


「ゴメン……私は手錠を付けなくて良いって言ったんだけど……」


「……今の君は一応、拘束されるべき存在だからな」


 橘の言葉を引き継ぎながら、部屋に入ってきたのは、白衣を着た男だ。


「秋宮副司令」


 橘が背筋を伸ばして敬礼をしようとしたが、男……秋宮さんかな? がそれを手で制して俺の方を向いた。


「柊真司。高校一年生。年齢今年の七月で十六歳。家族構成は両親と双子の妹達。学校の成績は毎回平均点よりも十点以上高く、選択科目である音楽に関しては常に学年トップスリーに入る……優秀だな」


「……何か俺の個人情報べらべら喋っていますけど、何なんです?」


 警戒心露わにして俺は聞いた。


 家族構成ならまだしも、俺の学校での成績まで知っているんだ。まず、やばい関連だろ。


 じっと睨み合う俺と秋宮。その二人の間で、橘は困ったようにしている。


「ふっ……」


 最近沈黙を破ったのは秋宮だった。秋宮は微笑を浮かべると、降参のように両手を挙げた。


「済まない。仕事柄君みたいな重要人物の身辺は調べておかないといけなかったんだ」


「……仕事柄?」


 秋宮はキリッとまじめな表情をすると、言い放った。


「柊真司。貴方の身柄を、我々特別災害対策チーム……通称、神代研究機関が預かります」


 ……取り敢えず通称の部分前の部分と全く関係無い気がする。


「私は神代機関の副司令及び、英雄武装(ヒーロー・ギア―ズ)研究主任秋宮弥彦だ」


「はあ、英雄武装(ヒーロー・ギアーズ)って?」

 

 あれ……何だろ。ものすごく懐かしい響きだな?


「その事もちゃんと説明しよう……取り敢えずついてきてくれるか?」


 ……俺に拒否権は無いと思う。





 さて、秋宮副司令と橘に連れられて廊下を歩く俺(ちなみにまだ電子手錠は外されていない)。


「神代機関とは十年ぐらい前に出来た機関でね。マリス対策専門チームだ」


 歩きながら秋宮さんがこの場所について話し始めた。


「表面上は、マリスの研究チームなんだが、実態はマリス殲滅も視野に入れている」


 俺たちは、エレベーターに乗って下に下降し始めた。


「私はこの機関には、創設期からはいないが、ここの司令官を除けば、一番ここにいるのは長いよ」


 司令官、という単語を聞いて、橘は物凄く嫌そうな顔をした。


「橘……?」


「あー……柊」


「はい?」


 秋宮さんが、歯切れ悪そうにこちらを向いてきた。


「その……うちの司令官。その、なんだ性格が人として若干破綻しているが、気にしないでくれ」


 いや、気にしますよ。


 そう思っていると、エレベーターがチン、と目的の階に着いた事を知らせた。


 そして、ドアが開いた次の瞬間、


「あ〜ろ〜は〜!!」



「死ね!! 莫迦兄!!」


「ぐは!」


 ……なっ、何か変な男がエレベーターが開いた途端にエレベーター内に飛び込んできて、男が飛び込んできた瞬間に、橘が男の顔面に思いっきり蹴りを入れたんだよな……?



「えーと……」


「ごめんなさい柊君。うちの莫迦兄が変な事して」


 橘がこちらに顔を向けて言った。


「え、兄ってまさか……」


 俺の言葉の意図に気がついたのか、秋宮さんが答えた。


「あいつの名前は橘謙吾。姫夜の実の兄だ」


 マジですか。




「はじめましてー。僕が神代機関司令官の橘謙吾だよー」


 あの後、直ぐに回復した橘司令官は俺たちと一緒に部屋に入った。


 部屋はどこぞの劇場のみたいな作りをしていて、俺たちは一番上の場所に立っており、下は色々な大きさのモニターが空中に投影されており、白い制服を着た色々な人がコンソールを忙しそうに操作していた。


 そして、俺たちは応接用らしいソファに座った。

  

 ちなみに対面に秋宮さんと、橘司令官が座り、俺と橘が一緒に座った。


「あっ、秋宮君」


 橘司令官が秋宮さんの方を向くと、秋宮さんは溜め息をついて白衣のポケットからリモコンらしき物を操作した。


 すると、俺の両手首についていた電子手錠がピピっと音が鳴り外れた。


「おお……やっと外れた」



 外れた電子手錠を秋宮さんに手渡して、俺は手首をさすりながらそう言った。


 いや、自由って素晴らしいな……肉体のみだが。


 ふと、橘司令官を見ると、何やら残念そうな表情をしていた。


「……何です?」


「ん? いやー手錠もう外させて良かったのかな? と思ってさ」


 何だ。俺ってそんなにやばい存在なのか?


 周りを見ると、橘は兄を睨み付け、秋宮さんは溜め息をついていた。


「はあーもう少し、君の拘束されている姿見たかったなー」


 なっなんだこの人。


「橘、何いってんだ。身体検査でこいつに害は無かった。にも関わらず起きるまで手錠を付けようって言ったのはお前だろうが」


 まあ、私も賛成したが。と付け加えた。


 はあ!? つまりアレか! この人が俺に手錠を付けた張本人か。


 橘司令官をジロリと見ると、橘司令官は全く悪びれた様子も無く、笑っていた。


「えーだって寝ているときに手錠を付けて起きたらどういう反応するか見てみたかったんだもん……監視カメラで見たときは爆笑したけど」


 次の瞬間に橘司令官を殴った俺は悪くないと思う。


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