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英雄武装士  作者: sora
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第四話  非日常への誘い

夜、晩ご飯を食べ終わった後、片付けを終えた後、俺は居間で寝転びながら、志織里と一緒にテレビを見ていた。


「ああー‼」


突然の香織里の叫び声。普通の家庭なら、どうした! と慌て駆けつける所だろうが、そこは我が家。特に動じる事も無く、のんびりとテレビを見続けていた。


少しすると、ドスドスと畳を踏みつけるかのような音と共に香織里がこちらに来た。


「兄ちゃん!」


風呂上がりなのだろう。香織里は寝間着用の浴衣を着、ポニーテールも降ろしている。


「何だよ」


「アイスが無い!」


「知らねえよ!」


思わず大きな声で突っ込んでしまった。


「知らねえよ! じゃない! アイスが無いんだよ兄ちゃん!」


「何なんだよ。つか、こないだ買ったばかりだろう」


俺や香織里達、特に香織里はアイスが大好きだ。それこそ年がら年中食べている。


唯、あんまり食べすぎは良く無いから、基本的な家の財政管理を任されている俺が買ってくるアイスの数を制限しているのだが。


「無いもの無いんだよ!」


地団駄を踏みながら言う香織里。そんな妹を鬱陶しそうに見る志織里。


「……香織里、うるさい」


「姉ちゃんまで! とにかく私はアイスが食べたいんだー‼」


うがーと吠えるような勢いで言う香織里。

 

 ……本当に面倒くさいな。


「…あれ、そういえばさっきゴミ箱見たとき、残りのアイスの容器が入っていたな」


俺がそう呟いた途端、香織里はピタ、と止まり次第にだらだらと冷や汗をかき始めた。


「お前……」


「香織里……」


俺と志織里が呆れの視線を送ると、香織里はあーだがうーだが、何か言うとしたが、やがてシュンとして、顔を俯かせた。そしてぽつりと呟いた。


「……だってアイス食べたかったんだもん」


もんじゃねえよ。と俺は心の中で突っ込んだ。口に出すのは野暮ってもんだと分かっているからだ。


「はあ」


俺は軽く息を吐くと、おもむろに立ち上がった。


「兄ちゃん?」


「何が良い?」


「えっ?」


「だから、アイス何がいい? ちょっとコンビニまで行って買ってくるからさ」


「えっでも……」


香織里が壁付けの時計をちらりと見る。時刻はもう十時を過ぎているからあまり外を出歩くのは危険だしな。


「心配すんな。すぐ行って帰ってくるだけだし、そう時間は掛からないよ。二十分ぐらいしたら帰ってく

るよ」


そう言って俺は香織里の頭をぽんぽんと叩く。


「そう……じゃあ、ピーチのソフト!」


「ピーチな、志織里は?」


未だにテレビのを見ている志織里にも一応聞く。


「……メロン」


「リョーカイ」


それだけ聞くと、俺は直ぐに自室に戻り、手短に支度する。


そして、玄関で靴を履いていると、後ろから二人が来た。


靴を履き終えて、二人の方を向くと、二人とも何やら心配そうな顔をしていた。


たく、何でそんな顔するかねぇ。


俺は二人を安心させるように二人の頭に手を置いた。


「さっきも言ったけど、直ぐ帰って来るから、心配するな。な?」


俺が二カッと笑うと二人は取り敢えず納得したようだ。


それを見ておれは二人から手を離し__その時二人は若干残念そうにしていたが__玄関の引き戸を開け

た。


「じゃあ、いってきます」


そう言って、俺は夜に染まった町に出た。






「ふう、何とか買えたな」


コンビニの自動ドアをから出て俺は、アイスが入ったビニール袋を見てそう呟いた。


家を出て、小走りをして数分、俺は何無くコンビニに着き、アイスを買えた。


それから、行きよりも少し歩き始め、数メートル歩いた時、



寝ている者全てを呼び起こすようなサイレンが夜の町に響いた。




 そのサイレンの音に俺は動揺する他無かった。



「おいおい、マジかよ……!」


このサイレンは第一級特別災害が発生した時に鳴るサイレン。つまり……マリスが出現したという訳だ


「…っ‼」


俺は素早く、携帯を取り出して、開いた。


そして、マリスの出現地域を調べた。


「おいおい、近いなぁ」


よりにもよって、俺が今いる場所から、さほど離れていない場所でマリスが出現していた。


「どうする?」


  今俺が出来る行動はいくつある?


 さっきのコンビニに戻るか? ……いや、もうコンビニはシャッターで閉じられているから無理だな。

 

 となると残る手段は……、


「逃げるか!」


 さっさと家に戻ることだ。幸いにもマリスの出現地域と俺の家はかなり離れている。


「よし、行くか……」


 そう言って、自分を勇気づけるように携帯を持った手を突き上げると、勢い余ったせいか、携帯が手か

ら滑ってしまい、携帯が空中に投げ出されてしまった。


「おっと」


 携帯の着地地点まで場所をずらし、携帯をキャッチしようとしたのだが、


「……は?」


 思わず間抜けな声を出してしまった。


 だが、考えても見てくれ。投げてしまった携帯をキャッチしようとしたら、いきなり携帯がブスリと何

か黒い槍みたいな物が突き刺さり、最早携帯としては完全に機能を失われてしまったのだ。


 これを冷静に受け止めるだけの器量を俺は生憎持ち合わせていない。


 つうか、携帯どうしよう。親から高校入学祝いに買って貰った最新機種何なんだけどな。まじやべえ

よ。親になんて言おう。


 ていうか、そろそろ現実逃避をやめるかねぇ。


 ……最も、俺の中にある警戒心は完全にやばいやばいと叫んでいる。


 正直に言えば、後ろを振り向きたくない。けれど振り向かないといけない。


「…………」


 そして、俺はゆっくりと後ろを振り向いた。


 ”それ”は、いた。


 黒い靄と言うのが正確だろう。靄からは長い腕らしきものが飛び出ており、おそらくこれが俺の携帯を

突き刺した物の正体だろう。そして、その靄には目らしき赤い点が二つほどついている。


 間違い無い。二年前、あの日に俺が見た靄と一緒だ。つまりこれが、


「マリス……」


 マリスは腕らしきものをゆっくりと戻していった。そして未だにその腕に突き刺さったままの携帯を見て、


 そのまま口らしき物を開け、携帯を飲み込んだ。


「……っ!!!!」


 こいつはやばい!


 俺の生きようとする生存本能らしきものが全力で叫んでいる。




 ――こいつはやばい――




 ――はやく逃げろ――




 じりじりとゆっくりと後ろに下がり、十分距離が離れたのを確認し、俺は、



「ダッシュ!」


 一目散に走り始めた。


 走り始め、少しして後ろを振り向いたら、


「嘘だろ……!」


 マリスは滑るようにしてこちらを追ってきていた。


「冗談きつい!」


 そう言いながら、俺はとにかく走った。現在民家が並ぶ住宅街を走っているのだが、人一人っ子居な

い。


 それもそのはずだろう。今頃みんなシェルターに避難しているのだろう。つまり、俺は助けを呼ぶこと

が出来ない。


 どれくらい走ってのだろうか。そろそろ、マリスの出現地域から離れようとしたとき、

 



 空がオーロラ色に変わった。




「なっ何だ?」


 俺は思わず走るのをやめてしまったが、直ぐにマリスがまだ追っているのに気がつき、再び走り出した。


 そして、そのまま無我夢中で走っていると、何かにぶつかった。


 その衝撃で、思わず後ろに転んで尻餅をついてしまった。


「痛った……何だよ一体」


 いくら必死だったとはいえ、ちゃんと前は確認していたはずなのにと思ったら、


 何やら、空のオーロラ色と同じ色の壁が出来ていた。


「はっ……?」


 一瞬呆けてしまったが、直ぐにはっと我に返り、直ぐにオーロラ色の壁に触った。


「なんだよこれ……」


 それは完全な壁の役割をしていて、いくら叩いても、びくともしない。


「おいおいふざけんなよ」


 左右を見ると、同じくオーロラ色の壁が延々と続いていた。つまり、この事が意味することはただ一

つ。





 完全に閉じ込められた。

 



 時間は真司が空がオーロラ色に変わった所に遡る。


 マリスは出現する前にある特殊な電波が出現地域に発生する。


 故に、対策チームはその地域周辺に警報を発生する。


 真司を追っていたマリスは唯のはぐれマリスだ。

 

 マリスとは基本的に、集団で出現する。

 

 だからこそ、対策チームは、電波が最も強く発生している場所に対策メンバーを送る。


 マリスが大量に群れている場所に一人の少女がいた。


『本部からCode03に。現在マリスはそちらに集結中、現在位値で迎撃してください』


「了解」


 少女は耳に付けられている無線機から聞こえてくる指示に、短く肯定の意を示した。


 通信を切って、少女は自分の目の前で群がっているマリスに視線を向けた。


 少女の目には、恐れなどの感情は皆無で只々、倒すべき相手としか映っていなかった。


 そして、少女は、腰に巻かれている革ケースの中から物を取り出した。


 それは刀の柄だった。

 

 但し、刀身は無く、柄と鍔だけだ。



「……発動」


 そう少女が呟くと、柄は雷を帯び始め、数秒もすると、一気に放電を始め、少女の体を包みこんだ。

 

 やがて、雷が収まると、少女の姿は変わっていた。


 少女の髪は、ポニーテール状に縛られており、さらに服装は侍姿で陣羽織を羽織っていた。


 そして、少女の手には先程の柄が手にされており、先程とは違い、刀身はあり、刀身は雷を帯びていた。


「Code03橘姫夜参ります」

 

 少女――橘姫夜は刀を構えてそう言った。

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