第7話 「リズの誓い」
“黒い王”――
世界を一度滅ぼしかけた男。
そして、私が信じようと決めた人。
揺れる心のまま、私は静かに答えを出そうとしていた。
王都の夜は静かだった。
でも、私の胸の中だけは嵐のようで、眠れなかった。
(……リオンは、本当に“黒い王”なの?)
神殿で見たリオンの姿。
あの時の目は、確かに普通じゃなかった。
威圧でも魔力でもない、もっと深いもの――。
「大切な奴に手ぇ出したら、神様でも許さねぇ」
あの言葉が、ずっと頭から離れない。
怖かった。
でも……それ以上に、胸が熱くなった。
私は立ち上がり、窓の外の夜空に向かって呟く。
「……私、あの人を守りたい」
◆◇◆
翌日。
リオンは王都の端っこで野良猫のように寝ていた。
瓦礫にもたれかかり、ぐでーっとしている。
「おー……リズ。朝か?」
完全に気の抜けた顔。
昨日の“黒い王”とは別人みたいで、私は思わず笑ってしまった。
「ねぇ、リオン」
「ん?」
「私、あなたと一緒に行く。
どこへ行くって決めてなくても、理由がなくても……
私はあなたのそばにいたい」
リオンは少しだけ目を丸くする。
「……お前、昨日の俺見て、怖くならなかったのかよ」
「怖かったよ。すっごく。
でも……それ以上に、あなたを知りたいって思ったの」
リオンは短く息を吐いた。
照れたような、困ったような、でもどこか安心したような顔。
「……勝手にすれば?」
それが、彼の“優しさ”なんだと分かった。
「うん。勝手にする!」
私は笑って答える。
その瞬間、王都の空が揺れた。
轟音。
王城の方向から黒煙が上がる。
「な、何!?」
次々に魔法光が上空に飛び、逃げ惑う人々。
兵士の怒号。
そして――不気味な影。
天を覆うように、巨大な“黒い手”が王城を握りつぶしていた。
「……は? やべぇの出てきたな」
リオンは髪をかきあげながら立ち上がる。
その背から黒風が漏れ始めた。
「リズ。下がってろ」
「嫌。私も行く」
一瞬、リオンは振り返った。
その目に宿った光を、私は見逃さなかった。
諦めでも、怒りでもない。
……信頼。
それは、初めて見た表情だった。
「……だったら、絶対離れるなよ」
「うん!」
私はリオンの背中に手を添える。
その瞬間、黒風が渦を巻き、地面が割れた。
“黒い王”が目覚める。
でも今度は――
独りじゃない。
第7話はリズの感情と決意の回でした。
ここで二人の“信頼関係”が一段深まり、次回の大規模戦闘につながります。
次回、第8話「黒手の侵攻」
――リオン、本気の半分だけ使う。




