第10話 「崩壊王都と、眠る英雄」
虚無の王との激戦は終わり、王都は半壊。
だが、生存者たちは――ひとりの男を見て震えていた。
最強で怠惰な“黒い王”。その素顔は、ただの寝坊助だった。
王都中央。
瓦礫の山で作られた簡易避難所。
その真ん中で――
リオンは堂々と寝ていた。
「……スゥ……スゥ……」
あの戦いの直後、彼は「眠い」と言って本当に寝てしまったのだ。
黒い王の紋章は消え、ただのぼさぼさ頭の青年に戻っている。
「……よく寝られるなぁ、この状況で」
リズは呆れ半分、安堵半分で彼を見つめていた。
◆◇◆
その頃、王都の指揮所では別の地獄が広がっていた。
「黒い王が……復活した……?」
「陛下は安否不明! 王城は半壊! 影の怪物の残骸も見えない!」
「住民は“リオンという男が救った”と言ってます!」
「救った? 王都半壊なんだぞ!? どんな戦いをしたらこうなる!?」
混乱に混乱が重なる中、ひとりの男が声を上げる。
「勇者団の長官を呼べ!
黒い王に関して唯一情報を持つのは勇者だけだ!」
しかし――
「ゆ、勇者団からの返答!
“黒い王の名を聞いた時点で撤退した”とのことです!」
「逃げたのか!?!?」
王都は壊滅的状況なのに、勇者は全員逃げた。
その事実が、国民の不信を一気に加速させる。
◆◇◆
同じ頃、避難所の端。
数人の兵士がリオンを遠巻きに見ながら震えていた。
「あれが……あの怠そうな青年が……」
「黒手も、空の穴も……全部あの人が消したのか……?」
「王都を救った英雄……いや、災厄か……?」
彼らの視線を感じて、リズはリオンの前に立つ。
「……怖がらないで。リオンは――人を守れる人だから」
「だ、だが……あの力……」
「確かに怖いよ。でも……」
リズはリオンの顔を見下ろす。
寝相は悪い。
髪は爆発してる。
口を少し開けて寝ている。
(……こんな人が、世界最強だなんて)
どう見ても悪人には見えない。
「私は、彼を信じるよ」
その言葉に、兵士たちは迷いながらも頷いた。
◆◇◆
その夜。
リオンはまだ眠っていたが、遠く離れた別の場所で――
ひとつの会議が始まっていた。
場所は 大陸連盟本部。
各国の代表が緊急招集され、巨大な円卓を囲んでいる。
魔導映像には、王都上空で暴れる“虚無の王”と、
それを一撃で消すリオンらしき影。
「……あの力。神代の魔王クラスだ」
「いや、外側の存在を消した。あれは神々でも不可能だ」
「生かしておけば、次に世界を壊すのは彼かもしれん」
ひとりの代表が口を開く。
「結論を述べる。
――黒い王、リオン・アークライト。
放置すれば、人類にとって最大の脅威となる」
会議室が静まる。
そして、
「黒い王の捕獲、または排除を最優先とする」
その瞬間、世界は“最強の怠惰”を敵に回した。
◆◇◆
翌朝。
リオンは寝ぼけながら起きた。
「んあ……なんか、やばい夢見た気がする……」
「夢じゃなくて、現実だよ」
リズが微笑む。
「国も、世界も、たぶんリオンを“脅威”として見始めてる」
「……は?」
リオンが半目で固まる。
リズは言った。
「だから――」
「私があなたを守る。
今度は、私の番だよ」
リオンの表情が数秒止まったあと、ため息をつく。
「……面倒くさ……」
だが、その頬は少しだけ、緩んでいた。
第10話は、戦闘後の政治・世界情勢が動き始める“転換ポイント”でした。
リオンが寝てる間に、世界が勝手に彼を敵認定するという最強怠惰系展開です。
次回はリオンとリズが正式に旅に出る導入回に入ります。
第11話「追われる最強と、守りたい少女」
――世界VSリオンが始まる。




