お疲れ会はデートの予感
今日は安全安心のしろかえでです!
<今回は和田くん視点です>
学校の前に横付けされたバスは1台ずつ校内へ入り、生徒を吐き出していく。
我が3組のバスはどういうわけかシンガリで……一番最後に校内へ入り、オレと田中さんはそのまた最後にバスを降りた。
と、向こうで一学年上の姉ちゃんが手を振っているのが見えた。
うわあ~! 何ちゅう保護ヅラ!!
「ひょっとしてあの人、和田くんのお姉さん?」って田中さんに聞かれて止む無く頷くと、田中さんはやわらオレの腕を巻き込んで、姉ちゃんの方へオレをグイグイ引っ張って行く。
そのいきなりな行動と……何か柔らかいものが微妙に当たっている気がして、オレのアタフタ度合いは半端ない!!
「和田センパイ……ですよね!弟さんをお連れしました!!」
「アハハハ!その様子じゃ、色々面倒を掛けたみたいだね。お礼申し上げます」
と姉ちゃんはオレに当て付けて田中さんに深々と頭を下げる。
「私の方こそ!和田センパイが用意して下さった“支援グッズ”はとても役立ちました!本当にありがとうございます」とこちらもオレに当て付けて深々とお辞儀する。
「そう言ってくれると嬉しいよ!もし良かったらアドレスとか交換してくれる? 因みに私の名前は『みずほ』美しいに王編の珠、帆船の帆と書くんだ。キミは田中千景さんでしょ?」
「ハイ!」と田中さんは元気いっぱいに返事をする。オレ、田中さんからこんな返事を貰った事が無い!
ちょっとばかし憮然としているとジャージの裾を姉ちゃんから引っ張られた。
「顔貸しな!」
田中さんがクラスメイトの世話を焼いているのを横目で見ながら「オレもクラス委員なんだけど!」と姉ちゃんに抗議する。
「お前なんか殆ど仕事してないだろ?!」
「そんな事ねーよ!」
「そんな事あるの!」と決めつけながら姉ちゃんは自分の財布を出し、中から五千円札を一枚抜き取った。
「ほら!これ!」
「なんだよ!」
「お前、今、そんなにお金持ってないだろ?!」
「そりゃそうだよ!『現金は二千円まで』ってオリエンテーション旅行の規則をクラス委員が破るわけにはいかないじゃん!」
「だから、このお金で千景ちゃんを慰労してやんな!」
「そんな!悪いよ!」
「悪いと思うんなら、夏休みにバイトして返しな!」
「……わかった。ありがと!」
「ああそうだ!行くのは西丸スーパーのフードコートにしな!あそこには先生も見回りに来ないから」
◇◇◇◇◇◇
西丸スーパーのフードコートは古っぽくて、客層からして“青春を謳歌する場所”じゃない。
つまり、ここでの『若いお客』は赤ん坊か子供だ!
そんな訳で、スタバみたいな飲み物は皆無なので……オレは姉ちゃんのアドバイスに乗っかる事にした。
「お昼、食べたのはバスに乗る随分前だったから……けっこうお腹空かない?」
「そう言えばそうね」
「この五千円を貸してくれた姉ちゃんから聞いたんだけど……ここのフードコートの味噌ラーメンは絶品なんだって!」
「ホント?! 美珠帆センパイのお勧めなら食べてみようかな」
「うん、お金はオレの方で払っておくからさ!」
「ありがとう!月曜に返すね!」
「あ、田中さんの分は姉ちゃんからの奢りだってさ!」
「そんな~!いいのかなあ……」
『だったら明日の土曜か明後日の日曜に姉ちゃんと三人で会わない?』って言いたかったけど……田中さんから絶対にチャラいと恩われるから言わなかった。
でも、今、オレ達はテーブルを挟んで差し向かいだ!
例え古っぽいフードコートの中、味噌ラーメンを啜っていてもだ!
ずっと先の未来に今日の事を二人で思い出して……
「ああ、あれがオレ達の初デートだったよね」と言い合う様子が妄想となってオレの頭にもたげる。
でも、目の前の田中さんは……
「それでさ!美珠帆センパイの“支援グッズ”が痒い所に手が届く優れモノでさ!」と姉ちゃんの話ばかり!
やれやれ!
オレの恋の道のりは……まだまだゴールには遠そうだ!
おしまい
このお話は『和田くんと田中さん♡♡ エチケット袋もチャラいおせっかい??』
https://ncode.syosetu.com/n8141kg/4/
の続きとなります(#^.^#)
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