今夜はイートイットその2
『よし。食事は、生きている物だけが味わえる特権!!』
『しかし、僕たちは、それに手を加えて、美味しくいただくことが許されている。贅沢を許させたエリート達さ。』
『ところでアレルギーは、あるかい?』
ふふ。エリート。エリートねぇ。何でも大丈夫だよ。
『それは、よかった。まずはチキンはどう?肉というやつは骨がついているところが一番うまいッ!』
『これは、アメリカのロードアイランド州というところの鶏さ。こいつは、なかなか値が張った!俺は、こいつの肉を、黒胡椒とにんにくで軽く炒めてやったよ。これは、イタリア風トーストことブルスケッタが最高さ。バゲットという塩を混ぜたパンに、ガーリックオイルとかオリーブオイルを塗って具を乗せる。そして、炭火で炙ってやるのさ。』
おー。おいしい。いくらでも食べれるわ。
『飲み物は何飲む?自分は砂糖たっぷりのインドの甘いミルクティー。チャーイをいただくよ。前は、コーヒーを砂糖が溶けきらないほど入れてドロドロしたやつを飲んでたが、いやはや、歳だね。』
パイはどう?アメリカのシリアルキャプテンクランチとリンゴ、アプリコットジャムを加えたパイだよ。』
この男は、私の聞いたことのない食べ物の名前と土地?の名前をつらつら言ってくる。私は、いろいろなところへ船員と共に行ってたから。なんとなくの土地は、知っていると自負している。しかし、まったく聞いたことのない土地だ。アメリカ?イタリア?インド?はて?
それもそうだが、いつもの私の食卓といえば、食パンと目玉焼きと焼いたベーコン。3食こればかりだったから。とても新鮮で楽しかった。そして、嬉しかった。
おいしい。なんか、とても幸せな気分。ありがとう。
言い切った途端涙が少し出てしまった。少し恥ずかしかったが、彼は、そんなことは、お構いなしにこう続ける。
『僕の出した食べ物は、どれも、見たことないだろう?そう、これは、闇の品と呼ばれているんだ。』
闇の品?おいおいおい。それ、食べて大丈夫だったの?と言ってやりたかったが声が裏返りそうなので言えなかった。
『おいおい。そんな顔をするなよ。名前は、とても怪しいがヤバい物ではない。
闇の品という名前には、この世界のものではなく、且つ、こいつらを入手できる人物が1人しかいないというところにあるんだ。』
『プラネットアース』
『俺は、いつかそこに行く。今食べたものは、俺のワクワクを刺激する一部でしかない。そこは、俺にとって未知の世界であり楽しさで溢れているんだ。』
『そんな俺の名前はアルル。アルル ビック』
『君の名前は?』
名前…
【名前。それは、どんな世界にいようと1つしか存在しない特別な事柄。名前は、誰かに呼びかけられるために常に待っている。呼びかけられたとき、いのちが生まれる。】
【黄金が眠る島:これは、1人が黄金を手に入れる物語】
名前は、アタシの名前は!!
「見つけたぞッ!!不法侵入者っ!!国の掟より貴様を殺す!!」
見つかった!!!助けて!お兄さん。っ!!!!
いない!!目を疑った!さっきまでご飯を食べていたはずのあの男がいない。
槍をこちらに突き付けている。もうとんで来る!!!貫通し殺される!!
ならば!こちらも仕事着を蒸着し殺すしかない?!いやだっ!!
でも?やらなければ??あああああああああああああああぁ!!!!
やる!!殺してやる!!
意志を決め仕事着に蒸着した私が、ハンマーを構えた時男の槍が向かってきた。
しかし、そのあと、奴は、悲鳴を上げた。おわああああ!
「てめぇ。なんだよこれはぁ。よぉぉぉ!」
まだ、何もしていない。右手に大きな円の穴が開いており、見間違いだろうか?指が6本に見えた。
痛みもあってか槍を地面にたたき捨てた。この時の私は、この瞬間を見逃さなかった。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!!!!
奴の頭にハンマーを叩き込んだ。
奴は、ぐしゃりという音を立てた。さっきまでの轟音と先走った血眼が嘘のように静かになる。
違う。私は悪くない。全部お前が悪いんだ。仕方ないんだ。ひぐぅ。ああああああぁぅぅ。苦しい。なぜ?こんな目に?
私は?私は?なんてことをしてしたんだ。涙で前が見えなくなった。空は、朝が来ようとしている。私は、とてもあの朝日を見ることができない。消えてしまいたい。…今は、暗闇の奥へ逃げるんだ。
そう思ってしまったからだろうか?因果応報というやつだろうか?私は、影の奥に足を踏み入れた時、ずるりと足を滑らせて下に広がる暗闇に落ちてしまう。
うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。