ロボットに乗り込むお話
死のイメージを明確に思い浮かべたらその通りに死ぬ、という最悪の能力まで持っていた穂士のマジックマシン。しかし、「明確じゃなければいいだけだから」と武志に押されてしまい、結局再びマジックマシンを使い、夢の世界へと入った。
「……はぁ、やっぱ首突っ込まなきゃ良かったかな」
『はっはっは、乗り掛かった船だろう?最後まで付き合ってもらうさ、少なくとも今日は』
まだ穂士は正式にバレットのメンバーになったわけではない。気になることがあるから、臨時で手伝いをさせてもらうことになっただけ。今日が最初で最後の仕事の可能性も、もちろんあるのだ。
「分かってます、自分で言ったことですしね…… それより、俺はこれからどうすれば?」
『おう、今接続するから待っててくれ』
「接続?」
夢の世界で頭の中に直接響いてくるような感覚で聞こえてくる声には、未だ慣れない。と言っても、まだ使用するのは2回目なのだが。
すると、真っ暗で何もない空間に微かに光が通った。
『よし、接続完了。何か変わったか?』
「いや、特に何も…… あっ」
否定しようとしたその時、空間に大きく画面のようなものが現れた。画面には、『SPRING』『SUMMER』『AUTUMN』『WINTER』の四季を表す英単語がそれぞれ表示されている。
「なんか英語が出てきました、サマーとかウィンターとか」
『正常に動作してるな、それじゃ春を選んでくれ』
言われるがまま『SPRING』と書かれた文字を押した。すると、穂士の周りの世界一帯の風景が一気に変わり、無機質な部屋へと移動する。だが、実際にその空間にいるのではなく、360度見渡せる3Dの世界のような感覚だ。
『周りにロボットとか乗り物とかがいっぱいあるとこに来れたか?』
周りを見てみると、武志の言う通り周りにはいろんなものがあった。特撮やアニメでよく見るようなロボットの類がたくさんだ。
「はい、あります」
『じゃ成功みたいだ、やっぱ適合率が高いとスムーズに行くなぁ』
昨日から適性があるだの適合者だの言われているが、その辺の話をまだ穂士は詳しく聞けていない。適性がないとマシンは使えないと言う話は聞いたが、なぜ一般人の穂士にそんなものがあるのだろうか。やはり、たまに見る変な夢が関係しているのか。
そんなことを考えていると、武志の次の指示が聞こえてくる。
『今、お前は【春巻5号】ってロボットの体とリンクした。簡単に言うと、マジックマシンを通じて戦闘ロボを動かせる』
「戦隊モノのデカロボみたいな感じですか?」
『多分そんな感じ。実際に乗ってるわけじゃないから、春巻5号がペシャンコになってもお前が死ぬことはない。ちょっと酔うらしいけどな』
他人事のように言うので、武志も体験したことはないのだろう。しかし、この言い方では他に使える人間がいるようにも思える。他に適合者とかいうのがいるのなら、わざわざ部外者の穂士を呼ぶ理由はなんなのだろう。
「でも、体動かせませんよ。不具合か何かですか?」
『いいや、まだイメージが確定できていないんだ。お前の力の源は想像力だが、動く想像をするためにはその対象物がどんなものか知らないといけないだろ?』
「あぁ、俺がまだこのロボットの姿形を知らないからイメージができないってことですね」
『そう言うことだ。今三人称視点の映像を送る、それで動作は完璧なはずだ』
言われた通り、視界の両端にロボットの姿がいろんな方向から撮られているものが映る。
白を基調としたゴテゴテした見た目のロボット、これが春巻5号なのだろう。体から手と足が生えている人型に近いものだが、肩や足が異様に伸びていたり、腕や胸の辺りが大きかったりする。ボディのところどころに金色のラインがあり、背中には『SP5』の文字が書かれている。
『それが春巻5号、人間に危害を及ぼす異世界の生物を対象として作られた戦闘用兵器だ。主な武装は魔力で作り出した高熱レーザー、遠距離と近距離で使い分けてくれ』
「スペックの説明は移動しながらの方がいいんじゃないですか。時間がないでしょう?」
『ははっ、そう焦るな。と言いたいところだが、確かにお前の言う通りだな。それじゃ、早速出動するぞ!』
すると、勢いよくキーボードを押す音が聞こえてきた。その直後に、春巻5号のボディが浮き上がった。どうやら床がエレベーターのように浮かび上がっているようだ。ここも恐らくアンダーグランドの中、つまり地下なのだろう。
『最終確認だ、本当に戦う覚悟はあるんだな?』
「覚悟がある、ってのとは違うと思います。でも……」
少し雰囲気を重くした武志の質問に、穂士は少し間を置いた。その間、いろんな風景が頭の中によぎった。夢の中で見た悲惨な光景や、先ほど生で見てきた火事現場。だが、そんな暗いものだけではない。九郎や咲希、それ以外にも多くはないが仲のいい友人たち、喧嘩もするが大事な家族、生まれ育った思い入れのある街。そんな暖かい記憶が、寝ていても鮮明に蘇る。
「見過ごす選択肢は、なかった。それだけです」
戦う覚悟が、自分にあるかどうかは分からない。だが何もしない選択肢がないことだけは、明確に分かっていた。
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