地下施設を再び訪れてしまったお話
火事現場から例のファミレスまではそう遠くなかったので、すぐに着いた。昨日辿ったのと同じルートで裏口まで回ると、隊長こと嶋 武志が待っていた。
「よっ、待ってたぜ」
武志は穂士が来たのを確認すると、昨日の咲希と同じ手順でドアを開けた。少し奥に入り、これも同じくエレベーターに乗り込んでB55階を押す。エレベーターで下っている間に、穂士は聞きたかったことを思い出した。
「あの、昨日から気になってたんですけど」
「ん?」
「なんで地上にファミレスがあるんですか?極秘施設の真上に、普通人がたくさん来るような店構えないでしょ」
上にあるファミレスの存在は、咲希に連れてこられる前から知っていた。入店したのは昨日が初めてだが、平日の夕方でもある程度は混んでいた。何かの拍子にこの地下施設がバレてしまえば、極秘もなにもないだろう。
「あー、うちで一番偉い人の趣味なんだとよ」
「趣味って…… ていうか、嶋さんが一番だと思ってました」
「俺は第二行動部隊隊長、トップはまた別だよ。まっ、その辺の詳しい部分はバレットの正式メンバーになってからだな」
「まだ入るとは言ってませんよ?」
「ここまで来て断るってこたぁ無いだろ。もうお前は逃げられないとこまで来てんだよ」
話が一区切りついたところで、エレベーターが止まった。少し急ぎ足でエレベーターを降りて直進し、一つゲートを潜ってから昨日入ったのと同じ部屋に入る。
「ここがメインルーム。ここから主に俺が現場にいるやつに指示を出すんだ。ちなみにお前がマジックマシンを使ったところは余り部屋」
(余った部屋に銃やらナイフやら置くなよ)
急いでいるので、ツッコミは心の中で抑えた。
少し大きめの机に目をやると、件のマジックマシンが置いてあった。昨日は散々な目に遭わされたので、少し顔を顰めてしまう。
「とりあえず日下部の状況を確認しよう」
武志はいつの間にかキーボードの前に座っていて、それを操作すると少し奥にある大きなモニターに映像が映し出された。
「日下部、現場の状況は?」
『あ隊長、ちょっと聞いてくださいよ!なんか大きめのトカゲみたいなのがうじゃうじゃいて、倒しても倒してもキリがないんですよ〜!!』
「知能が無いだけマシだろ。ちょっと前は頭のいい鳥みたいなやつ駆除したじゃねぇか。あれと比べりゃ……」
『あいつは物理攻撃だけでしたけど、こいつらは火ぃ吹くんす!それがたくさんいたら、私もそろそろガス欠ですって!』
映像に映し出されたのは、木に隠れている咲希の姿。その後ろには、報告通り犬より少し大きめサイズの赤いトカゲのような生物がうじゃうじゃいるのが見える。これまた報告通りで、本当に口から火を吐いている。それも火力が高いようで、木や草に燃え移るとすぐに辺りに火を広げている。木に至っては、数秒としないうちに形を崩して倒れていっている。
「うっわ、えげつな……」
『え、穂士くん?』
あまりの悲惨な光景に穂士が呟くと、咲希に聞こえて名前を呼ばれた。反応からして、穂士がアンダーグランドに招かれたことは報告されていなかったようだ。
「朝日奈も気になることがあるらしくてな。臨時で手伝ってもらうことにしたんだ」
『はぁ!? 危険度考えてくださいよ、新人背負ってこの赤トカゲの対処しろとか無理ゲーですって!!』
「大丈夫だって。あのマジックマシンなら、朝日奈本人に命の危険が及ぶことは早々無い。お前は気にせず自分の任務をやればいいさ」
『え〜……』
炭か何かで少し黒くなっている頬を拭いながら、嫌そうな顔をする咲希がドアップで映し出される。
『……あんまりウロチョロされたら私の気が散るんですケド』
「その辺は善処する」
『む〜…… ま、いっか。でも無茶はしないでよ、死ぬ可能性がゼロって訳じゃ無いんだから』
そう言い残すと、映像がプツンと途切れる。どうやら仕事に戻ったらしい。
そこで穂士は、自分のマジックマシンに触れながら武志に聞く。
「あの、死ぬ可能性がゼロじゃないってのは?俺はここで寝るマジックマシンを使って、日下部をサポートするんですよね?寝るだけなのに死ぬなんてことは……」
「ん〜、そのマジックマシンは別に睡眠誘発装置じゃないんだよ。本来はイメージを具現化させる、とんでもないチートアイテム。だけど、寝ながらじゃないと使えないから寝るんだ」
「ふ〜ん…… それで、そのチートアイテムにどんな危険性が?」
「あー、それはだな……」
少し勿体ぶるように溜めると、武志はとんでもないことを言いだした。
「イメージが明確なほど、具現化させる対象もよりリアルなものになるんだ。だから、もし死のイメージを頭の中で具体的に浮かべちまったら……」
「……ちまったら?」
「イメージした通りに死ぬ」
「とんでもない殺人マシンじゃねぇか」
思わず敬語を忘れて、ツッコんでしまった。
先日の投稿で初めてブックマークをしてもらい、嬉しすぎてめっちゃ叫んでしまいました。
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