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同級生の怪しいバイト先に行くお話

第一話を書いたら1万字超えになっちゃったので、3分割しました。

「朝日奈、起きろ」


 机にうつ伏せになって幸せなひと時、即ち居眠りをしていたら、朝日奈 穂士は数学教師に起こされた。教科書で叩かれて。

 若干の視線を集めながら、穂士は軽く謝って顔を上げた。


「穂士が寝るの、珍しいな」

「ん…… なんか疲れてんのかな、最近変な夢見るんだよ」


 穂士の席はグラウンド側の列の一番後ろ。その前の席に座る柊 九郎が、こっそり後ろを向いて話しかけてくる。


「変な夢?」


 九郎が興味深そうに食いついてくる。大きなあくびを左手で隠しながら、穂士が頷く。


「なんか、漫画でよく見るような世界が滅茶苦茶になってる夢」

「滅茶苦茶って具体的には?」

「建物が全部崩れてて、そこら中が火の海。死体とか腕とか足とか頭が転がってる」

「うっわ生々しい…… 最近そういう映画でも見たんじゃないの?」

「趣味じゃない」


 そんな夢を何度も見る穂士としては、むしろそういう映画はしばらく見たくない。どうせ寝たら拝めるものを、わざわざ現実の時間を消費してまで見たいとは思わない。

 時計に目をやると、残り10分で授業が終わることを把握する。最後ぐらいは真面目に聞こうと教科書に目をやり、黒板の問題を解いていく。もちろん何も分からないので、問題をノートに書いて終わってしまうのだが。

 本日最後の授業が終わり、九郎が疲労を押し出そうと体を伸ばす。


「う〜、終わったぁ。やっと帰れる……」

「お前今日部活って言ってなかった?」

「げっ、そうだった。めんどいなぁ……」


 帰りのホームルームが始まるが、担任教師は大雑把な性格なので大した話もせず、すぐに終わって教室が騒がしくなる。


「仕方ない……ちょっくら顔出してくる」

「いってら。先帰ってるぞ〜」


 嫌々部室の方へ向かう九郎に手を振ってから、穂士も昇降口の方に足を向ける。廊下を歩いていると、見慣れた女子生徒と鉢合わせた。


「あっ、穂士くん。今帰るとこ?柊くんは?」


 短めの橙色の髪の毛が、日光でより眩しく目に映った。女子生徒、もとい日下部 咲希は学校でも人気がある立ち位置なので、穂士としてはどこまで近しく会話していいのかが分からない存在だ。


「うん、九郎は部活だってさ」

「柊くん部活やってたんだ…… 文芸部?」

「正解」


 咲希と九郎はあまり接点がないはずだが、それでも部活を一発で当てられている辺り、九郎がどういう風に見られているのかがよく分かる。

 一度会話が始まってしまったため、結局穂士は咲希と並んで昇降口まで向かう。途中、嫉妬や恨みといった感情のこもっている視線を向けられた気もしたが、気づかないふりをする。


「日下部が放課後すぐ帰るの珍しいよな、バイト?」

「そ。乙女はお金がかかる生き物なんだよ〜」


 冗談っぽく笑いながら咲希が言う。その発言に思うとことがあったのか、穂士が一瞬考えるような顔をした。咲希はそれに気づき、ニヤつくような表情になる。


「穂士くん。今、『日下部なら彼氏でも作って貢がせるぐらいできそうだけどな』、的なこと思ったでしょ」

「……お前、相変わらず人の考えてること当てるの得意だよな」

「えっへへ〜」

「褒めたわけじゃないぞ、むしろ怖い」

「JKに怖いとか言うな〜」


 一言一句思考を当てられてしまった穂士が、若干の戸惑いと言葉通りの恐怖が混ざったような顔をする。要約すると、ちょっと引いている。当の本人は何食わぬ顔であるが。


「あっそうだ。穂士くん、折角だからバイト先遊びに来てよ」

「は?今から?」

「うん、今から」


 会話を隠しているわけではないので、もちろん周囲の人間にはある程度聞こえている。尚且つ、学校の人気者である咲希の声なので、気になっている人間の耳には当然届いている。辺りを見渡すと、明らかに睨んでくる男子生徒が数名。いや、少ないが女子の視線もあった。まだ1年生の1学期だと言うのに、一体どのようにしてこれまでの人気を得たのだろうか。


「それ、断るって選択肢は」

「君が放課後遊ぶような友人は高校には柊くんぐらいだし、恋人もいない。バイトも部活もやっていない。即ち、暇だよね?」

「日下部、探偵にでもなったらどうだ」

「アリだね。あの探偵っぽい服かわいいよね〜」


 探偵っぽい服、の意味がよく分からなかったが、漫画でよく見る茶色の帽子とコートみたいなアレのことだろうか。

 睨んでくる数々の視線は怖かったが、逃げる道も塞がれてしまったので、大人しく穂士は咲希についていった。


「ていうか俺、お前が何のバイトしてるのか知らないんだけど」

「だろうね。言ってないし」

「それ、ヤバい仕事してる時の返しだろ」

「あっははー」

「おい逃げんな」


 笑って誤魔化す咲希を追いかけるように、2人は校門を出た。学校の近くには生徒がまだ残っており、人目も多くて穂士は生きた心地がしなかった。校内よりは視線が少なくなったが、それでも疑念や嫉妬の視線は肌感覚で分かる。


「まぁ安心しなって。いかがわしい店でも闇っぽい仕事でもないから」

「本当だろうな……」

「信用ないな〜。中学からの付き合いなんだし、もうちょい信じてくれてもいいんじゃない?」

「はいはい」


 先ほど誤魔化されたことを根に持ってるのか、穂士も適当に返事をする。期待したような反応を得られなかったらしい咲希が、拗ねたような顔をした。

 だが、そのまま言葉を続けることはなく、咲希が立ち止まった。それに釣られて、穂士も足を止める。


「ここだよ」

「……なんか、もうちょい予想を超えたものだと思ってたわ」


 含みのある言い方をしてどんなバイトか教えてくれなかった割に、着いた場所はなんて事のない、ただのファミレスだった。それも、どこでも見かけるような大型チェーンの。

 しかし、ややガッカリするような表情の穂士を見て、咲希がニヤつく。


「ふっふっふっ、甘いね穂士くん。ただのファミレスだと思ったら大間違いだよ?」

「はいはい、さっさと中入ろうぜ。歩いたら小腹減ったわ」

「ねぇねぇ、君本当に私のこと信じてないね?流石の私でも傷つくよ!」


 冗談っぽく咲希が悲しそうな顔をするが、無視して穂士は進もうとする。それに拗ねるような顔をしてから、あっと呟いて穂士の制服の裾を引っ張った。


「穂士くん穂士くん、入り口はそっちじゃないよ?」

「え?……いやまぁ、そりゃ客と従業員じゃ入り口は違うだろ」

「いやいや、さっきから言ってるでしょ。ファミレスだと思ったら大間違いだよって」

「俺が聞いたのは『ただのファミレスだと思ったら』だったけどな」

「細かいことは気にしない!ほらっ、こっちだよ」


 咲希の言っていることはよく理解できなかったが、どうやら咲希は確かにただバイト先のファミレスに連れてきたわけじゃないらしい。咲希に引っ張られながら、建物の裏までやって来る。辺りを見渡すとちゃんと監視カメラがあるので、カツアゲされる心配はないと思いたい。


「穂士くん、今カツアゲされるんじゃないかみたいなこと思ったでしょ」

「まぁ、うん」

「全く、人をなんだと思ってるんだか」

「人の心を容赦なくのぞき見してくるやばい人」

「褒め言葉ってことにしといてあげる」


 そう言いながら、ファミレスの裏口と思われるドアにくっついている機械にカードを読み込ませた。ただのファミレスにしてはやたらハイテクなものを導入してるなと思いつつ、咲希に促されるまま渋々だが中に入った。


「なぁ、部外者が入ってもいいのかよここ」

「黙ってついてきな〜」


 そう言いながら先に進む咲希を疑いつつも、後を追いかけようとしたその時、違和感に気がついた。確かに裏口から入ったので、てっきり更衣室か休憩室だと思っていた。しかし、まず視界に広がったのは壁で、左に通路が続いている。その通路の奥もすぐに行き止まりだが、壁ではなくエレベーターが設置してある。しかし、表からこの建物を見たとき、明らかにこの天井より高いデザインはされていなかった。即ち、このエレベーターは地下行きということになる。


「……普通のファミレスに地下室があるかどうかは知らんけど、ホントどこに連れて行くつもりな訳?」

「ひっみつ〜」


 悪戯っ子のような笑みを浮かべながら、咲希がエレベーターのボタンを押す。すぐにエレベーターは開くので、咲希に続いて穂士も乗り込む。入口とは逆方向のの壁に背中を預けて、咲希がボタンを押した操作パネルに目をやった。その瞬間、あまりのボタンの多さに目を疑った。地下室とはいえメインはファミレスなのだから、倉庫や冷凍庫の類があるだけだと思っていたが、この量は明らかにそれだけではないだろう。横列に三個のボタンが並んでいて、それが縦にいくつも伸びている。一番下に書かれている数字は、B99。


「……地下99階!?」


 書いている数字があまりに現実離れしていて理解が遅れた穂士の大声が、密室に響いた。

世界で1番深い地下の建物ってどんぐらい深いんですかね、調べてもよく分かんなかった。


毎日投稿は難しいですが、できるだけ期間を空けずに投稿していけたらと思っています…!!(学生の身なのでテスト期間とかは特にキツイですが)

これから頑張って書いていきますので、お時間ある時に読んでいただけたらと思います!

「面白い!」と思っていただけた方は、ブックマークや下にある⭐︎を押してもらえたら嬉しいです!

よろしくお願いします!!

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