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豹変、そして……

え?


妊娠?


誰が?私が?


誰の子を?


そんなの……たとえ半年間、音信不通だったとしても夫であるフォルカーとの間の子だとしか考えられない。


妊娠9週?

ということは今、妊娠三ヶ月?

それってひと月前に子種を受け取らないと出来ないわよね?


ひと月前といえば……あのエッチな夢を見た頃……よね?


「やだっ……私、ホントにエッチな夢で妊娠したの?」


そういえばフォルカーは美男子だから、昔から町内や学校の女の子たちから視線を交わすだけで濡れる、とかすれ違うだけで妊娠しそうなくらい雄みがヤバいとかキャーキャー言われていたっけ……。


「ま、まさか……まさかそんな事って……」


私は思わず机に突っ伏した。


どうしよう。

こんなこと誰にも相談できない……

ヤスミンにも……言えないわっ……!


倦怠感も悪心も微熱もすべて妊娠の初期症状だった。


だけど信じられなくても何でも、私のお腹にフォルカーの子がいるのは間違いないわけで……。


とにかく、もうすぐフォルカーが帰ってくるはずだから、まず一番初めに告げるのはフォルカーであるべきだわ。

そして彼ときちんと相談して、その上で他の人にも打ち明けよう。


私はそう決めて、お腹の子のために努めて身も心も穏やかに過ごした。


そんな中で、王都の街で号外が配られる。

それは、来週の頭には帰還途中である第三連隊が王都に到着。

騎士団総本部のある王城までの大通りを凱旋パレードを行うという内容の記事が報じられた。


ヤスミンが(ウチ)に来る前に貰ってきた号外を手にして私に言う。


「奥様、とうとう旦那様が帰ってきます。もう猶予はありませんよ?離婚をされるのでしたら、とりあえずは先に家を出た方がいいと思うんです」


「ヤスミン……私は離婚はしないわ。……いえ、夫に離婚を願われたら応じるしかないと思うけど、諸々の事情が変わったのよ」


「諸々の事情?何が変わったというんです?」


「それはまずはフォルカーに言わないと……とにかく、私はここで夫の帰りを待つわ」


「……奥様って、ぽやっとしているように見えて実はなかなか頑固ですよね。自分の意思をしっかりと持っているタイプだったのが意外でした」


「そうかしら?」


私がそう返すと、

ヤスミンは急に表情がごっそり抜け落ち、まるで別人のように低い声で話し出した。


「……ええ。小娘如き、簡単に言いくるめて騙せると思っていたのに」


「言いくるめて騙せる?ヤスミン……?」


「どうしましょうかね?出来れば手荒な真似なんてしたくなかったんですけど」


「え?」


「奥様自らの意思で離婚してくれれば荒事にならずに済んだのになぁ……実はね、《《本当の雇い主》》にはもうさっさと誘拐して娼館にでも売っぱらって本人の瑕疵で家出扱いにすればいいとか言われてたんですよ」


「どういうこと?」


「でもね、奥さんて結構良い人だし面白いし、強行な手段は選びたくなかったんですよねぇ」


「ヤスミン……?」


「だけどここまで頑なに離婚を拒んで家を出ようとしないなら仕方ないですね。ちょっと痛い目を見て眠って貰って、その間に旦那も追えないような遠い遠い異国にでも売り飛ばしてやりますよ……」


「う、売り飛ばす?誰を……?私を?」


突然人が変わったかのように豹変したヤスミンに、私は狼狽えて彼女の言葉の意味を確認するように繰り返すことしかできなかった。


これは誰?目の前にいる人は本当にヤスミンなの?


いつも明るくて元気で優しい、あのヤスミンなの?


訳が分からずに狼狽える私を前にして、ヤスミンは急にまた声のトーンを変えてぽつりとつぶやいた。


「と、一瞬思わなくもなかったんですけどね……」


ヤスミンの態度がまた変わった。


だけどその時、

私の肩を大きな手が包み、ぐいっと引き寄せられた。


突然抱き寄せられ私はなすがままにその逞しい腕に閉じ込められる。


一瞬の事でとびあがるほど驚いたけど、少しの恐怖も感じなかったのは昔から慣れ親しんだ腕の中だったから。


私はその腕の中から見上げ、確信を持ちたくて彼の名を呼んだ。


「……フォル?」


「ただいまシュリ。これでも急いで帰ってきたんだけど、まさに間一髪だったか?」


額に汗を滲ませ、少し焦ったように私を見下ろすその人は間違いなく最愛の夫、フォルカー・クライブだった。







やっとこさフォルカー登場。



次回更新は27日の夜です。


ストックがなくなっちった☆(´>∀<`)ゝ



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