9-11.真実
「私の天使としての仕事が、アークの騎士の仕事を支えてるって、ずっと思ってたから…アーク、騎士としてどんどん活躍してるし、私も頑張らなきゃって」
アークは目をぱちくりさせてから、やがて苦笑を零した。
「…参ったな。俺だってずっと、イリスに負けないようにって、必死に努力してきたのに」
「え?」
驚いた顔のイリスの頭に、アークがぽんと手を乗せる。
「イリスが花天使として大聖堂に入った日、俺も騎士になるって決めたんだ。お前が天使としてこの国を守るなら、俺も騎士としてお前以上に強くならないと――『守ってやる』って約束、果たせないからな」
イリスが、目を見開いた。
「…あの時の約束、覚えててくれたんだ」
「当たり前だろ?」
アークは笑いながら、イリスの髪をわしわしと撫でる。
「だからこれからは、もっと俺を頼ってくれ。…俺はイリスを守りたい。でも何も言ってくれなきゃ、どうやって守ればいいか分からないだろ」
「…うん」
頷いて、イリスはそっと、右手の小指を差し出した。
「じゃあ、アークも約束して。困ったことがあったら、必ず私に話すって」
イリスの小指を前に、アークはきょとんとしている。
「私だって、アークの力になりたいもん。守られてばっかりじゃ不公平だよ」
「…そっか」
そう言ってアークは、自分の小指でイリスの小指を絡めとる。
「分かった。約束する」
硬く指切りした2人は互いに見つめ合い、微笑んだ。