9-10.真実
「…これで、謎が解けた。どうしてあの黒竜が、この国にやって来たのか」
その答えに、イリスもすぐに気付く。
「エネルギーの淀みが、魔物を呼び寄せてしまったんだね」
やはり、神殿の放置が、リルフォーレに危機を招く引き金になっていたのだ。
「ああ。だが、3日目からイリスが浄化を再開したことで、結界が元の力を取り戻した」
そしてそのお陰で、黒竜を森に還すことが出来た。
「…この国を守ったのは、お前の力だったんだな」
アークがそう言って微笑むと、イリスは慌てて首を横に振る。
「そんなことない!竜と戦ったのはアークでしょ?」
「俺はただ、結界の力を利用しただけだよ」
「だとしても、結界は私一人で作るんじゃないよ。この国の聖天使、みんなの力で作るんだもん!」
自分の手柄を決して認めようとしないイリスに、アークは思わず、吹き出した。
「ほんっと、お前、昔から変なところ頑固だよな」
笑いが止まらない様子のアークに、イリスは言い返すことも出来ず、頬を染めて俯く。
ひとしきり笑い終えてから、アークは再び、イリスに向き合うと。
「…どうして、何も言ってくれなかったんだ?こんなに危険な状態になるまで」
聞かれて、言葉に詰まるイリス。するとアークはすぐに、苦笑がちに俯くと。
「まぁ、そりゃそうか。俺に言ったところで、浄化を手伝えるわけでもないしな」
その言葉に、イリスはぱっと顔を上げる。
「違うよ!私が、アークに心配かけたくなかったの。アークの力になりたかったから」
「…俺の?」
聞き返すアークに、イリスはこくりと頷いて。




