9-7.真実
――コンコン。
不意に聞こえたノックの音で、イリスは目を覚ました。
「失礼。イリスちゃん、入りますよ~」
聞き慣れない女性の声だ。まだくらくらする頭で、イリスは懸命に記憶を辿る。確か、東の神殿でアークに助けられて、守衛館で治療を受けることになって…
病室のドアを開け、ひょっこりと部屋に入って来たのは、食堂の女将だった。
「具合はどう?ちょっとは楽になったかしら」
「…あ、あの…」
イリスが驚いた顔で固まっているのを見て、女将は。
「あら、ごめんなさい!知らないおばちゃんが突然入って来たらびっくりするわよね!大丈夫、あたしはしがない食堂の女将よ」
そう言って可笑しそうに笑う女将に、イリスがおずおずと尋ねる。
「あの、アークは…」
「ああ、アッちゃんはねぇ…この差し入れを置いた後、仕事に戻っちゃったわ」
言いながら女将は、盆の上のスープをイリスの方へ差し出した。
「これを、アークが…?」
「そう。スープにしてくれって頼まれたの。食べられそうかしら?」
イリスが、ベッドの上で何とか上体を起こす。スープには沢山の具材が柔らかく煮込まれ、ブイヨンの深い香りが鼻をくすぐった。
「…はい、いただきます」
イリスの笑顔に、女将も満面の笑みで、スープを手渡した。




