9-3.真実
アークはリタの腕を振り解くと、その後ろのレイナとエルダに向けて。
「そこの2人も、神殿守護職だろう。昨日、一日中宴の会場にいるのを大勢の人が見ているんだ」
「そ、それは…」
気まずそうに目を反らす2人。だが、アークの前でリタはすぐに笑顔に戻り。
「もう、アーク様、そんなに怖い顔しないでください!神殿の浄化は、毎日行わなくても大丈夫なんですよ」
アークが視線を戻すと、リタはぱちりとウィンクをひとつ。
「だって、今もきちんと結界は保たれているでしょ?私たちが今まで、丹精込めて浄化してきたエネルギーは、そう簡単には消えないんですよ」
リタの言葉に、アークは一瞬、考え込む。
(…確かに、あの黒竜以降、魔物に目立った動きは無い。だが…)
昨日、イリスは言った。1日でも浄化を怠ると、エネルギーが淀んでしまう、と。
この矛盾は、一体――
1日中宴を楽しんでいたリタたち。一方で、動くこともままならないほど疲れ果てていたイリス。
(まさか――…)
「…っ!」
刹那、アークは血相を変えて、リタたちを押しのけるように門から駆け出した。
「アーク様…!?」
残されたリタたちは、ぽかんとして門を見つめるしかなかった。




