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8-14.宴

「あ、そういえばアーク、何か聞きたいことがあるって言ってなかった?」


イリスが小さく首を傾げてみせる。そう、そもそもイリスを誘ったのは、浄化のエネルギーに関する話を聞くためだ。昨日の黒竜侵入の真相がそこにあるのではないかと、アークは推測していた。


しかし、アークは。


「…いや、その話はまた今度にするよ。さ、お前はもう休め。あとは俺が片しておくから」


「えっ…でも」


アークは最後の一口を頬張ると、自分とイリスの弁当箱を手に流しへ向かう。


「明日、休めないんだろ。だったら今日のうちに回復させなきゃ、身体が持たないぞ」


2つの弁当箱を洗い終え、アークはタオルで手を拭きながらイリスの傍にやって来た。


そして、そのままひょいと、イリスを抱え上げる。


「…っえ、え!?あ、アーク、ちょっと、何するの!?」


「何って…部屋に運ぶんだが?お前、眠くなると机に突っ伏したまま、何度起こしても動かなかっただろ」


「そ、そんな昔のこと…!!」


イリスが慌てて、火を噴きそうな顔を両手で覆った。しかしいくら目を閉じても、触れ合ったアークの胸からは鼓動の音が聞こえてくるし、力強い腕の温もりや、前髪に微かに感じる吐息が、距離の近さを否応なしに伝えてくる。


イリスが固まっている間にも、アークはすたすたと居間を横切り、奥にあるイリスの部屋の扉を開ける。


そして、窓辺に置かれたベッドの上に、そっとイリスを下ろした。


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