8-9.宴
「ごっほ…っ!!」
「あんたね、人を見かけだけで判断してるようじゃ、まだまだ半人前よ」
「確かに、それは最もだな」
激しく咳き込むカイに同情の眼差しを向けつつも、ジルはソフィーの言葉に大きく頷く。
「だが、あの天使様たちは毎晩、俺たちのために夕食を作って来てくれたぞ。『見かけだけ』ってわけでもないんじゃないか?」
「…うん、それもさぁ…なんかちょっと、違和感じゃない?」
「違和感?」
ジルが聞き返すと、ソフィーは複雑な表情で腕組みする。
「何ていうか…本当に私たちのためなのかな?って」
確かに彼女たちは、毎晩料理を配りながら、騎士たちに労いの言葉をかけてくれた。それは、勿論ソフィーも知っている。だが。
(あの子たちの料理…確かに見た目は華やかで味も美味しいけど、女将さんみたいな“温かさ”が、感じられなかった)
並べられた料理はどれも、肉や魚を贅沢に使い、油とスパイスでしっかり味付けされた食べ応えのあるもの。騎士たちは夢中でかき込んでいたが、こういった料理は胃腸に負荷がかかりやすく、余分な脂質を摂り過ぎてしまう。
女将が作ってくれる献立のように、野菜や穀物とのバランスが取れていないのだ。
そして、彼女たちの笑顔もどこか、取って付けたような薄っぺらなものに思えてならなかった。
「上手く言えないんだけど、裏に本当の目的が隠れてるような気がするのよね。…ま、ただの勘だけどさ」
「…それってやっぱり僻みなんじゃ…い、いや、何でもないっす!!」
カイは途中まで言いかけて、ソフィーの睨みに慌てて口を噤んだ。




