8-8.宴
「…俺は、騎士としての仕事に誇りを持っている。誰か一人のために、その誇りを捨てることはできない。たとえそれがどんなに大事な人でも」
そう言って、ふっと微笑む。
「むしろ、俺がこの国を守り抜くことで、その人の幸せにも繋がっていくはずだ。そのために、俺はもっと強くならなきゃならない」
自分自身にも言い聞かせるように、深く呼吸をしてから。
「…俺は、もう二度と、大切な人を失くしたくはないんだ」
アークは再び背を向けると、庭園の奥に歩いていく。
「…っ!待って!アーク様…!」
リタも追いかけようとするが。
「あ、リタちゃん!まだここにいたのかい?」
「夕飯はまだ?良かったら一緒に食べないか?」
「えっ、ちょ、ちょっと…!」
やって来た騎士の一団に、あっという間に取り囲まれてしまった。
(あーん、アーク様ぁ…!)
宵闇の中、気付いた時にはもう、アークの姿は無くなっていた。
騎士たちが一斉に天使の少女を取り囲む様を、少し離れたところからソフィーも目撃していた。
「はぁ、あいつら揃いも揃って鼻の下伸ばしちゃって…同じ騎士として恥ずかしいわ」
半眼で溜息を吐くソフィー。そんな様子に、ジルが隣で朗らかに笑う。
「まあまあ、大目に見てやれよ。普段男ばっかりのむさくるしい中にいるんだから、可愛い女の子がいたら話しかけたくもなるだろう」
「…『男ばっかり』って…ここに、女もいますけど?」
じっとりとしたソフィーの視線に、ジルは視線を泳がせた。
「先輩、天使様が可愛いからって、僻んでるんですかぁ?」
そう言ってニヤニヤしているカイの脇腹に、ソフィーがすかさず拳を叩きこむ。




