8-6.宴
そして、その夜。
約束の7時に城へとやって来たアークは、広い庭園を見渡す。
(…まだ来てないか)
忙しいと言っていたし、少し遅れているのかもしれない。
小さく溜息を吐いた時。
「――アーク様!」
名前を呼ばれて顔を上げると、遠くから駆け寄って来る少女の姿。
大きな瞳を輝かせ、リタがアークの目の前で、弾けるように笑った。
「嬉しい…!やっとお会いできましたね」
「あなたは、確か」
驚いて瞬きをするアークに、リタは上目遣いで囁く。
「リタって呼んでください。敬語も使わないで。私…私、ずっとアーク様のこと、待ってたんですよ」
「…待ってた?俺を?」
首を傾げるアークに、リタは大きく頷いて見せると。
「はい!毎晩、お夕食を作って守衛館で待ってたのに…来てくれないなんて、ひどいです」
そう言って目を潤ませ、薄紅色の唇を尖らせるリタ。世の多くの男たちにとっては、一撃必殺の仕草だろう。
しかし、アークはというと。困り顔で視線を逸らし、こっそり頭を掻いていた。
この少女と会う約束など、した覚えは無いが…確かに最近、よく夕食を差し入れてくれる天使がいると聞いてはいたが、それが何故、こんな話に?




