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8-4.宴
「…イリス?」
アークが小さく呟く。一人街道を歩くイリスの姿が目に映るや、アークはその後姿に駆け寄った。
後ろから肩を叩くと、イリスも驚いた顔で振り向く。
「アーク!」
「おはよう。こないだからよく会うな」
アークが言うと、イリスもくすりと微笑んだ。
「ほんとだね。アークは今日もお仕事?」
「ああ。お前こそ、宴に行かなくていいのか?」
「うん…」
聞かれて、イリスは曖昧に言葉を濁す。
宴の報せは、イリスのもとにも届いていた。
しかし今や、イリスは4か所全ての神殿の浄化を担う毎日だ。昨日の黒竜の一件も聞いていたので、今日はより念入りに、浄化を行うつもりでいた。
仕事を終えた後、果たして城に足を運ぶ時間と元気が残っているかどうか…
「今日も、ちょっと忙しくて。行けたとしても夜になっちゃうかな」
「そっか…まあ、俺も似たようなもんだ」
アークもそう言って苦笑する。それからもう一度、イリスの目を見ると。




