7-12.異変
「確かに、それはそうなんだが…考えてみれば、あんなに立派な竜が、俺たちの匂いを感じ取れるくらい近くにいることがおかしいんだ。俺たちが活動してた場所なんて、せいぜい結界から数百メートル以内だろう」
静かに目を閉じ、古い記憶を辿る。
「…昔、父さんに聞いたことがある。竜は本来、人が入り込めないような森の奥深くを住処にしている。縄張り意識が強いから、森を大きく移動することは滅多にないと」
「…つまり、こういう事?あの黒竜は、元々何らかの理由で、リルフォーレのすぐ近くまで来ていた。そこに私たちが森に入ったから、匂いに気付いて追って来た」
「でも、“何らかの理由”って、一体何なんだ?」
ソフィーとジルがじっとアークを見つめるが、アークは大きく溜息を吐いて。
「それを、さっきからずっと考えているんだが…巨大な魔物を呼び寄せる何かが、リルフォーレで起こっているとしたら」
「いやいや、末恐ろしいこと言わないでくれよ!魔物討伐の英雄が」
「アーク、さすがにそれは心配し過ぎ。ジルの言う通り、あんたが国を危機から救ったのよ?魔物のことはいったん忘れて、明日の宴、ちゃんと楽しんで来なさいよ」
2人の言葉に、アークはきょとんとして顔を上げる。
「“宴”…って、何の話だ?」
ソフィーとジルは互いに顔を見合わせ、苦笑と溜め息を零すのであった。




