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第七章 異変

浄火の異変を受けて、カーシャの指示のもと、天使たちは翌朝までかけて全ての神殿・教会を調査して回った。


しかし、どこも異常は確認されず、結局浄火が乱れた原因は分からずじまいだった。


執務室で報告を受けたカーシャは、額に手を当てて考え込む。


「どこにも異常がないというのに…まだ何か、見落としているものがあるのかしら。それともこれは、何かの前触れなのかしら――…?」


祭壇の間の浄火は、相変わらず激しく揺らいでいる。今現在、何も起こっていないのであれば、あるいはこれは未来に対する警告なのだろうか。


「ちょっとカーシャ、あなた、顔色が真っ白よ。宿直の交代時間はとっくに過ぎているでしょう。少しお休みなさいな」


ハンナが眉根を寄せてそう言うが、カーシャは首を横に振り。


「いいえ、原因が分かるまで、ここを離れるわけにはいかないわ。これから国中の聖天使たちに報せを出さなければ」


そう言って羽ペンを取り、“伝聞”の呪文を唱えようとするカーシャの手を、ハンナがそっと掴んだ。


「ええ、こう書いて送るんでしょう?『持ち場に何か異常があれば、どんな些細なことでもすぐに大聖堂に報せるように』って」


驚いた目のカーシャの手から羽ペンを抜き取り、ハンナはひとつ片目を瞑ってみせてから、今言った言葉をすらすらと空中に記す。


ペン先からは光のインクが文字を成し、ハンナが呟いた呪文とともに、何十にも増幅して四方に飛び立っていった。


「ここで報告を待つことなら、私たちにもできるわ。今あなたに必要なのは、しっかり休息をとること。じゃなきゃ、いざ何かが起こった時に身体がもたないじゃないの。その時には容赦なく叩き起こしますから、眠れるときに眠っておいて頂戴な」


茶目っ気たっぷりなハンナの笑顔に、張り詰めていたカーシャの顔にも、堪らず苦笑が浮かび上がる。


「…全く、敵わないわね、あなたには。分かったわ、少し休ませてもらうわね」


ハンナは満足げに頷いて、執務室を出るカーシャを扉まで見送った。


「何かあれば、すぐに起こしにきてちょうだい。頼んだわよ」


「ええ。後は任せて」


ハンナが頷くと、カーシャも微笑んで頷き返し、靴音を響かせて廊下の奥に消えていった。


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