6-11.それぞれの祭り期間
月が天頂に昇り、真夜中が近くなった頃。
大聖堂の最上階で控えていたカーシャとハンナのもとに、2人の花天使の少女が駆け込んできた。
「天使長様、シスター!大変です!浄火の炎が…!」
花天使たちの言葉に、カーシャとハンナは一瞬の目配せの後、すぐに祭壇の間へと階段を下りる。
そこで目にしたものは。
「…これは」
聖火台の上、浄火の炎が大きく揺らめいていた。勿論、風など吹いてはいない。
「夜の初めごろから小さく揺れ始めたんです。最初は気のせいかなって思ったんですけど、だんだん揺れが大きくなって、今はこんなに…」
花天使の1人が話すのを聞きながら、カーシャはじっと目の前の炎を見定める。弱まっている気配はないが、この乱れ方は一体――
「…リリーフェ様が、何か警告なさっているのかもしれないわ」
傍らのハンナの言葉にその横顔を見やると、彼女もまた怪訝そうな瞳で浄火を見つめているのだった。
カーシャは、2人の花天使に向き直り。
「2人とも、よく聞いて。今から手分けして、国中の教会と神殿を確認して回るわ。すぐに他の花天使たちを呼んできてちょうだい」
「…はい!」
花天使たちはしっかりと頷き、一斉に祭壇の間から駆け出していった。