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6-4.それぞれの祭り期間
神殿は街の中心からは少し外れた場所にあるため、道を歩くのはイリスだけだ。…と思っていたら、不意に。
「…イリス?」
耳に届いた声に、ハッとして顔を上げる。
「アーク…!」
束の間、イリスの顔にも輝きが戻る。
駆け寄って来たアークに、イリスは。
「こんなところで、どうしたの?」
「いや、住民から、魔物がいるかもしれないって通報があってさ。確認したら、タヌキが茂みに隠れてただけだった」
「ふふ、そうだったんだね」
思わず、くすりと笑いを零すイリス。そんな様子に、アークも微笑んで。
「祭りで全然見かけないけど、忙しいのか?」
「うん…まあ、ちょっとね。」
「そっか…」
呟いてから、アークはふと思い立って、隊服のポケットに右手を突っ込む。
「…そうだ、これ、さっき迷子を泣き止ませるのに買ったんだ」
アークが包みを開けると、中にはこんがりと焼き上がったスコーンが。くるみとメープルシロップが練り込まれており、甘い香りが漂ってくる。
1つは子供にやってしまったが、袋にはまだ2つ残っていた。




