6-2.それぞれの祭り期間
「おっ、アッちゃん、お疲れ!なぁんだ、まだお昼食べてなかったの!?」
食堂の奥、厨房からひょっこり顔を出したのは、長年騎士たちの食事を担当する料理人の女性。
騎士たちからは『女将さん』と呼ばれ、厨房で働く者たちを束ねている。気さくで温かい、騎士団のお母さん的存在だ。
「女将さん、まだ昼飯残ってるかな」
「大丈夫、まだあるわよ。ちょっと待って、今あっため直してあげるからね」
昼時を過ぎた食堂はがらんとして、聞こえてくるのは皿洗いの音くらいだ。アークは、近くの席に腰かけながら。
「いいよ、冷たいままでも。これから夕食の支度で忙しいだろ?」
「うふふ、それがね、そうでもないのよ」
言いながら女将は、意味ありげな笑みを浮かべて振り返る。
「アッちゃん、昨日の夜いなかったっけ?夜の帳と共に、どこからか3人の天使様が舞い降りて、美味しい料理を振舞ってくれたのよ」
「3人の…天使?」
「そ。もー、それはそれは可愛らしいお姿だったわ」
謳うようにうっとりと話す女将と、首を傾げるアーク。
「それでね、その天使様たちが、祭り期間中は毎日お夕食を作って持って来てくれるって言うのよ。こーんなにたくさんの量よ!お陰であたしも作る量が減って、ずいぶん楽させてもらえるわ」
「へぇ…そんなことがあったのか」
アークが呟くと、女将が料理を乗せた盆を持ってやって来る。