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5-12.天手古舞

だが。


「…ごめん!私たち今から、どうしてもやらなきゃならないことがあるの!」


そう言ってリタは口元で両手を合わせ、上目遣いにイリスを見つめてきた。


「神殿の浄化は、明日の朝一番でやるから!それじゃあね!」


「えっ…!?」


3人は逃げるように駆け出し、イリスの前から立ち去る。


「ちょっと待って…!ねぇ、みんな!」


イリスの呼びかけも虚しく。


3人の後姿は、人混みの中あっという間に見えなくなってしまった。



☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩



「よーし、じゃ、早速作ろ!」


「おー!」


リタの家の台所に集まった3人は、エプロン姿で拳を上げる。


「騎士様たちの胃袋を掴む美味しい夜ご飯、たーくさん作んなきゃね!」


「私、お母さんから秘伝のレシピ、聞いてきたよ!」


レイナとエルダが楽しそうに、市場で買ってきた食材を並べ始める。


そんな中、ひと際真剣な表情でまな板に向かうのは、リタだ。


「これで今度こそ、アーク様の心を掴んでみせるんだから…!」


仕事一筋のアークに近づくには、彼の職場に会いに行くしかない。そこでリタは、守衛館に入り込む口実として、騎士団に料理を差し入れることを思いついた。


この作戦ならアークにも、リタの容姿の美しさだけでなく、家庭的で献身的な女性だとアピールできるはず。そう考えたリタはレイナとエルダを誘い、早速市場で大量の食糧を仕入れて来たのだ。


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