5-11.天手古舞
一方イリスは、リタたち3人の姿を探して街を駆け巡っていた。
東の神殿から家に帰り着いた後も嫌な予感は収まらず、他の2か所も確認しに行ったところ、同じように放置され淀んでしまっていた。
慌ててリタたちの家を訪ねて回ったのだが、それぞれの家族からは揃って「女神祭に出掛けた」と回答があったため、こうして街に出て来たのだ。
もうすぐ日暮れを迎える時間帯、人出もだいぶ減ってくる。明るいうちにどうにか見つけなければと、祈るように走るイリスだったが――その想いは、通じたらしい。
市場の方から歩いてくる3人組の姿が、イリスの目に飛び込んできた。
息を切らしながら、すぐさま駆け寄る。
大きな荷物をそれぞれ抱えた3人も、イリスの姿に気付くと。
「あれっ…イリス?」
「どうしたの?そんなに慌てて」
レイナとエルダが、そう言って目をぱちくりさせている。
まだ肩を大きく上下させながらも、イリスは懸命に息を整えて。
「みんな、神殿の浄化はどうしたの?」
聞くなり、3人は揃って、気まずそうに目を反らした。
「3か所とも、すっかりエネルギーが淀んでる。このままじゃ国の結界を保てないよ。今すぐ行って浄化しないと!」
光魔法は、太陽が沈む夜の時間帯は効きにくくなる。それは勿論、浄化の魔力も同様だ。その為、大きな魔力を必要とする神殿の浄化は、日があるうちに済ませなければならない。
もう日没が迫っている。3人が今すぐそれぞれの神殿に向かわなければ、間に合わない。