5-10.天手古舞
(…なんで!?どうして受け取ってくれないの!?)
しばし呆然として立ち尽くした後、リタは慌てて、噴水の水面に自らの姿を映してみる。やはり、服もヘアアレンジも、メイクも完璧だ。
普段から街を歩くだけで、何人もの男性を振り向かせるリタである。実際今日もここに来るまで、何度お茶や食事に誘われたことか。
そんなリタが、自分からデートに誘ったというのに、断られてしまうなんて…
(ひょっとして…アーク様って、お仕事以外に興味がないの…?)
がっくりと項垂れて、リタはへなへなと噴水の淵に座り込んだ。しかし、はたと気が付いて顔を上げる。
(でも、ちょっと待って。それって裏を返せば、アーク様がとっても優秀な騎士だって証拠じゃない?)
祭り期間だというのに、ずっと街に出て仕事に打ち込む勤勉さ。その上、自分のことよりも仲間のことを気に掛ける優しさ。最年少で守衛部隊長になるほどの実力者だというのに、驚くほど謙虚で実直だ。
(きっとこれからもどんどん出世するだろうし…それに、優しいから家族のことも大事にしてくれそう。仕事一筋なら浮気の心配もないし)
リタの目に、やはり間違いはなかった。
(アーク様より素敵な騎士なんて、他にいない。絶対に私がゲットするんだから…!)
リタは急いで家に戻るや、レイナとエルダに召集状を送るのであった。
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