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5-9.天手古舞

「あの…よろしければこれから、ご一緒にお茶でもいかがですか?」


そう言って頬を赤らめるリタ。心の内で首を傾げていたアークだったが、その言葉に慌ててプレゼントを押し返した。


「折角ですが、まだ隊務中ですので。それに元々俺は、礼をされるようなことはしていませんから」


「いいえ!あの時アーク様に助けていただかなければ、私は転んで大ケガをしていたかもしれません」


だが、ここであっさり引き下がるリタではない。街中探しまわってようやくアークと出逢えたのだ。再度プレゼントを差し出し、アークの手に握らせて。


「お仕事がお忙しければ、終わるまでお待ちします。私、どうしてもアーク様に、お礼の気持ちをお伝えしたくて…」


キラキラと潤んだ上目遣い。それはまるで、花の精が放つ媚薬のような。


しかし、目の前のアークはというと、困ったように笑って首を横に振る。


「お礼なら、今のお言葉だけで十分です。申し訳ないが、街では昨日からトラブルが多発していて、とてもお茶どころではないので」


「えっ…」


これまで笑顔を崩さなかったリタが、思わず真顔に戻った。


アークは再び、リタの手にプレゼントを戻すと。


「良かったらこれは、守衛館の騎士たちに持って行ってやってください。女神祭が始まってから、皆必死に街を駆け回っていますから…休憩に戻った時に甘いものがあれば、きっと喜びます」


するとそこに、どこからか罵声が響き渡る。


「また喧嘩か…失礼、もう行かなければ」


「えっ、あの」


アークはぱっと駆け出すと、あっという間に見えなくなってしまった。



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