5-4.天手古舞
☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩
一方のイリスは、開祭の儀での大役を終えて安心したのも束の間、騎士たちと同様大忙しの1日を過ごしていた。
いつも通り神殿の浄化を完了したところまでは良かったものの、その後国中の教会から薬の補充依頼が次々舞い込み、一件一件対応しているうちに夜になってしまった。
(はあ、お腹空いた~!)
手早く作り上げた遅めの夕食を前に、いただきます!と手を合わせる。
旬野菜のサラダをもぐもぐしながら、ようやく、今朝のアークとの再会に思いを馳せることが出来た。
(仕事が一段落したら、甘いものでも差し入れしに行こうと思ってたのに…こんな時間になっちゃった)
薬の注文が殺到したのは、祭りの熱気の中で体調を崩す人が続出したからだ。4年に一度の物珍しさからつい夢中になり、何時間も日差しの下に居続けてしまったり、食べ過ぎや飲み過ぎでお腹を壊してしまったり。そんな人々が、こぞって教会に助けを求めて来たのだという。
イリスも薬を作れるだけ作って届けてきたが、まだ何件か対応しきれていない教会がある。明日の朝一番でその残りの薬を作り、配ってくるつもりだが…果たしてこれから、新規の依頼は如何ほど舞い込んでくるだろうか。
まあ、今日は祭りの初日ともあって、街中が必要以上にバタバタしていた気がする。きっとアークも、あちこち駆けまわって対応に追われていたことだろう。
(明日からは、薬の需要はもう少し落ち着くかな?そしたら、市場でケーキの材料、買って来たいんだけど…)
子供の頃からアークは、バターをたっぷり使ったパウンドケーキが大好きだった。イリスの母と3人で、この家のキッチンでもよく作ったものだ。
パウンドケーキは質量の割にカロリーが高く、仕事で消耗したエネルギーを手早く補ってくれる。そこにドライフルーツやナッツを加えれば、栄養も満点だ。




