5-3.天手古舞
「これ、さっき天使の子から預かったわ。アークに助けてもらったお礼だって」
「お礼…?」
ピンと来ていない様子のアークを見て、ソフィーはさらに。
「プラチナブロンドの巻き毛に、緑の瞳の女の子よ。見惚れちゃうくらい可愛い子だった」
「…ああ、あの時の」
思い当たることがあったのか、アークは小さく頷いたが、しかしソフィーから差し出された袋を受け取ろうとはせず。
「別にお礼をされるようなことはしてないよ。みんなで適当に分けといてくれないか」
「え…いいんすか?天使様からの贈り物ですよ!?」
カイはぎょっとして目を見開くが、アークは何でもないように微笑むと。
「じゃ、俺は上に報告上げてから飯にするから、みんなはゆっくり食べててくれ」
「おーう」
食堂を後にするアークの背中を、ジルが腕を振って見送った。
「はー…出来る男は、どんな時でもクールなんすねぇ…」
「はは!単にあいつは、仕事しか頭にないだけだろう」
カイとジルは、そう言って食事を再開するが。
「うーん…それだけじゃない気もするけど」
「ん?なんか言ったか?」
椅子に座り直しながら、ソフィーは袋のリボンをほどく。
「何でもない。わ、美味しそうなクッキー!」
アークの言葉に甘えて、クッキーは食後のデザートに3人でいただくことにして、付いていたカードはこっそりポケットにしまい込んだ。
アークの気持ちはどうあれ、これだけは、後できちんと渡してやらなければ。
夕食を終えると、ソフィーは再び、活気で満ちた夜の街へ駆け出した。




