4-10.開祭の儀
「えっ、な、なに?私、何か変なこと言った?」
「いや、そうじゃなくて」
困ったように口をパクパクさせるイリスに、アークは。
――ぽん。
イリスの、小さな銀色の頭の上に、アークの大きな掌が乗る。
小さい頃、よくそうしていたように。
「…もっと早く、会いに来ればよかった。会えない理由なんて、別に何もなかったのにな」
その言葉と手の温もりに、イリスは頬を赤らめながら頷いて。
「…私も、ほんとは、ずっとアークと話したかったの。聞きたいことも、聞いてほしいことも、たくさんあって…」
それを聞いたアークは、イリスの髪を優しく撫でながら、頷いた。
と、その時。
ピ――ッ!
大聖堂の正門付近で、笛の音が鳴り響いた。騎士団の集合の合図だ。
「…もう行かないと」
「うん。お仕事、頑張ってね」
髪からそっと手を放し、微笑みながら頷くイリスの目を、もう一度見つめて。
「イリスも、仕事の合間にでも祭りに遊びに来いよ。街では俺も警護してるから」
「うん!時間見て、応援に行くね」
そう言うイリスに頷いて見せると、アークは正門に向けて、風のように駆けていった。
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