4-5.開祭の儀
一方、リタたち3人は今日も、花園の東屋でお茶をしつつ、アクセサリー作りに励んでいた。
しかしどうも、東屋には不穏な空気が立ち込めている。
「ああもう、天使長様の意地悪!浄化点灯、やらせてくださいってあんなにお願いしてたのに!」
柔らかそうな頬を真っ赤に染めて、リタは怒り心頭の様相だった。
今日、天使界でも女神祭の配置が正式に発表されたが、それを見てからというもののリタはずっとこの調子なのだ。
「まあまあ。選ばれたのがイリスなら仕方ないよ。いくらリタでも、今回は相手が悪かったね」
その横ではレイナが、いつものように穏やかな笑顔でリタを宥めていた。
そんなレイナの言葉にも、リタはむすっとしたままそっぽを向いてしまう。
「…何よ、みんなしてイリス、イリスって。あんなの、お母さんがちょっと有名な聖天使だったからって、優遇されてるだけじゃない」
そう、イリスさえいなければ。浄化点灯に選ばれていたのは、間違いなくリタだったはずなのだ。
花天使時代、レイナ、エルダを含む大勢の同期の天使たちの中で、常にトップの成績を収めていたのがリタだった。
当然、そのためには莫大な努力を要した。花天使として大聖堂に迎えられた者の中から、聖天使に昇格できるのはほんの一握り。厳しい修行の日々に耐えかねて、途中で大聖堂を去る者も少なくない。
そんな中3人はどんなにつらい修行も、共に励まし合いながら乗り越えて来た。
それも全てはこの女神祭で、“運命の番”となる騎士とめぐり逢うためだ。
「浄化点灯に選出されれば、間違いなく騎士様から注目してもらえる。女神祭のために、私がどれだけ頑張ってきたか…天使長様は、なんにも分かってないんだから」




