3-6.女神祭
と。
イリスの両手から白い光が溢れ、ソラナの右手を通して全身に染み渡る。
「えっ!?な、何これ?」
「“自浄”です。浄化魔法の一種で、体内の毒素を浄化して回復力を高めてくれるんですよ」
“自浄”は、浄化魔法の中でも基本中の基本。しかし天使たちは、毎日この“自浄”を自分自身に施すことで魔力を保つことが出来るという、重要な魔法だ。
浄化は鍛錬を積めば積むほど強い魔力が身に着くが、逆に魔法を使わなければ、すぐに回路が閉じてしまうという、厄介な性質も持っている。
つまり、どれだけ強力な浄化の力を手に入れたとしても、数日も魔法を使わなければ、その力は全て失われてしまうのだ。
回路が閉じてしまうと、また一から鍛錬の積み直し。時間も労力もかかるため、天使たちが“自浄”を怠ることは無い。
そしてこの“自浄”は、自分だけでなく他人にかけることもできる。
「へぇ、天使様のヒーリングねぇ!なるほど、確かになんか、身体がぽかぽかして元気が出て来たみたい!」
「良かった!これでお仕事、乗り越えられるといいんですけど」
「うん、ばっちりばっちり!イリスちゃんの愛情、たっぷり受け取ったわ。ありがと」
「いいえ!こちらこそ素敵な布地、ありがとうございます」
イリスは籠の中から、薬瓶を数本取り出して。
「これ、今日のお代です。息子さん用に咳止め薬と、旦那さん用の二日酔い防止のお薬」
「いつもありがとうね。…もう、旦那のはなくていいって。これがあるからあの人、調子乗って吞んだくれるんだから」
ソラナの息子は生まれつき喘息もちで、イリスの薬がよく効くと重宝している。ソラナは、薬瓶を大事そうに籠にしまった。
「今度はソラナさん用に、栄養剤も作ってきますね!」
「あはは!大丈夫よ、私はこれくらいじゃ倒れやしないから!」
そう言ってカラカラと笑いながら、ソラナは手を振ってイリスを見送ってくれた。