3-2.女神祭
「イリスが頑張ってるって、いつも噂に聞いてるよ!私の自慢の後輩だよ」
言われて、イリスはえへへ…と照れ笑いを浮かべる。
ルシアは、聖天使になったばかりのイリスに神殿守護職のいろはを教えてくれた、大好きな先輩天使だった。
天使長からも一目置かれる非常に優秀な聖天使だったが、番となった騎士との間に子供を授かり、2年前に守護職を引退。今は、1歳になる双子の女の子の母親だ。
「ルシアさんも、“風見鶏の教会”にご用ですか?」
「うん!このお花、よかったら飾ってもらおうと思ってね~!」
そういうルシアの腕の中には、見事に花を付けたトルコギキョウの花束が。
ルシアは昔から、“緑化”の魔法種を使って美しい花々を育てるのが得意だった。
「はいっ、これ、イリスにも一束あげる!」
「わあ…!ありがとうございます!」
色とりどりの花束を胸に、イリスも満面の笑みで、甘い香りを吸い込む。
「私も、そろそろ聖天使の仕事に復帰しようと思ってさ」
「えっ、本当ですか?」
ルシアの言葉に、イリスが顔を上げた。
「うん、最近体調も大分落ち着いてきたし。仕事の間は、近所のばあやたちがチビたちのこと見てくれるって言ってて」
「ルシアさんが復帰してくれたら、私もすっごく嬉しいです!」
瞳を輝かせるイリスに、今度はルシアが照れ笑いを浮かべる。
「まぁ、しばらくは育児と両立だから、どこかの教会の補助職あたりかなぁ。神殿は新しい子たちが入ったばっかりだしね」