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10-16.祭りのあと
「…なぁ、イリス」
呼ばれて、イリスはアークの横顔を見上げる。
「無事に退院出来たら…俺と、番になってくれないか」
刹那、イリスの頬が朱に染まるのが、薄暗い中でも見て取れた。
「俺はこれからもずっと、イリスを守り続けるから」
「…うん」
イリスはしっかりと頷き、アークの肩にそっと額を預けた。気を抜いたら、嬉しさで涙が零れそうだ。
アークも、そんなイリスの肩を抱き寄せて。
「退院したら、俺も宿舎を出るよ。一緒に、あの家に帰ろう」
「うん。また一緒に暮らせるんだね」
アークの腕の中で、イリスが嬉しそうに笑う。互いの温もりに身を預けながら、2人はただ静かに、窓の外の星空を見上げていた。
重なり合った2つの鼓動に、血潮までもが溶け合うようで。
いっその事、このまま――あなたと、ひとつになれたら。
「…ねぇ、アーク」
心地よい熱の中で、イリスが呟く。
「番になるの…今すぐじゃダメかな」
その、甘い声を聞くなり、アークは。