10-8.祭りのあと
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翌日には女神祭の閉祭の儀が執り行われ、祭りは無事に幕を下ろした。
女神祭の最終日、イリスは“魔力欠乏”の反動による高熱に襲われ、夜になって熱が引いてくると今度は貧血症状と、散々な一日だった。
その後も数日は熱がぶり返したり、激しい頭痛やめまいで起き上がれない日々が続く。そんなイリスのもとに、アークは祭りの後始末で多忙な合間を縫って見舞いに来てくれた。
「俺には付いていることしか出来ないが」とアークは言ったが、アークが傍に居てくれるだけで、どんなに身体が辛くても、不思議と力が湧いてくるような気がするのだった。
守衛館の手厚い医療と女将の愛情料理も相まって、イリスはゆっくりと、だが着実に元気を取り戻していく。
そうして一週間が経つ頃には、イリスは部屋の中を歩き回れるまでに回復したが、医師によるとまだ油断は出来ず、退院はさせられない、とのこと。
(…お医者様からは、まだ外へ出てはいけないって言われたけど)
窓辺から街を眺めながら、イリスがぼんやりと考える。
(身体は動くし、何かできること、無いかなぁ?)
入院中とはいえ、病室でただじっとしているだけでは落ち着かないイリスである。せめて少しでも、お世話になっている守衛館の方々に、お返しできることはないだろうか。
(…あれ?)
ふと、イリスの視線が施設の入り口付近に吸い寄せられる。そこに向かって、何段にも重なった大きな箱が歩いて来た――否、その陰に、揺れ動く金色のポニーテールが見え隠れしている。
(ソフィーさん?)
イリスは病室から飛び出すと、1階の玄関まで降りて行った。




