10-7.祭りのあと
「…あのね、アーク」
再び視線が合い、イリスは。
「もう一回、キスして?」
「…っ!?」
今度はアークが、耳の先まで朱に染めながら。
「…ま、まだ、魔力が足りないのか?」
「ち、違うよ!」
イリスはぷるぷると首を振って。
「アークがキスしてくれたら…私、また、頑張れるから」
その言葉に、アークは。
「…イリス」
小さく、呟いてから。
硬い、大きな手で、イリスの頬をそっと撫でる。アークは身を屈めて、唇を重ねた。
「…もう、頑張らなくていい」
ゆっくりと唇を離してから、アークは。
「ずっと好きだった。…イリスには、いつも笑っていてほしいんだ」
そしてもう一度、口付ける。
今度は、柔らかな唇を優しく吸ってから。
「…だからこれ以上、自分で自分を傷つけないでくれ」
それから、いくつもの口付けが降ってきた。
額に、瞼に、そして唇に。甘い熱に蕩けてしまいそうで、しかしイリスは不意に、アークの唇を指で封じる。
「あ、アーク…私にも、ちゃんと言わせて?」
目の前の空色の瞳を真っ直ぐに見つめて、イリスは。
「私も、アークが大好き」
「…ありがとう」
いたずらっぽく微笑むイリスに、照れたように微笑むアーク。そして再び2人は、長い口付けを交わすのだった。




