10-5.祭りのあと
「天使界は、このご恩を決して忘れないわ。私たちにできることがあれば、何でも言ってちょうだい。…それと、これは厚かましいお願いだけど」
カーシャの眼を真っ直ぐに見つめ返してくる空色の瞳に、思いを託して。
「どうかこれからも、イリスのことを、守ってあげてちょうだい」
「勿論。そう、約束しましたから」
アークがしっかりと頷くのを見て、カーシャは安堵と共に、守衛館を後にしたのだった。
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夜半過ぎ、ようやく仕事が一段落したアークは、仮眠休憩のため守衛館を出た。
真っ先に向かった先は――
病室の扉をそっと開けて、中に入る。
「…アーク?」
聞こえた微かな声に、アークは扉を閉めながら。
「悪い、起こしちゃったか」
「ううん…」
ベッドの上で、イリスは首を横に振る。扉が閉まると、部屋の中は窓から差し込む月明かりだけで、互いの表情まで見えないのが幸いだった。
…本当は、昼間の神殿での出来事を思い出して、中々寝付けないでいたのだ。
(…やっぱり、アークにとってあれは、ただの応急処置…だったんだよね)
そんなことを考えていると、アークが近寄って来たので、慌てて布団で顔を隠した。




