10-4.祭りのあと
「そうそう、ルシア達が、あなたのお見舞いに来たがっていたわよ」
「ルシアさんが?」
イリスが聞くと、カーシャが微笑む。
「ハンナも、他の天使たちもみんな、あなたが帰って来るのを待ってるわ。しっかり休んで、元気な顔を見せてあげて」
「…はい」
イリスが頷くのを見届けてから、カーシャは静かに扉を閉めた。
騎士団長レギオンに、イリスのことを懇ろに頼んでから部屋を出たカーシャは、廊下で見覚えのある顔とすれ違った。
「あなた、さっきイリスのことを報告に来てくれた…」
声を掛けられたアークは、立ち止まって一礼する。
「イリスとは、幼馴染だそうね。…あの子を助けてくれて、本当にありがとう」
「いえ、俺はただ、あいつを守りたくて必死で…」
深々と頭を下げるカーシャに、アークが慌ててそう言うと。
カーシャは顔を上げ、小さく首を横に振った。
「あなたがいなければ、私たちは大切な仲間を失っていたかもしれない。あの子がこの国や私たちを守るために、命を削っていたことにも気づかずに」
出掛けにカーシャが祭壇の間に立ち寄ると、浄火の乱れが収まっていた。女神リリーフェは、ずっとこの事を警告していたのだろう。




