表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/122

10-3.祭りのあと

「天使として一番大切な“心”を、育てきれなかった。それに気付かずに、未熟なままのあの子たちを、聖天使として送り出してしまったのだから」


「“心”…ですか」


イリスが繰り返すと、カーシャが頷く。


「あの子たちはあなたのように、奉仕の心をもって聖天使になったわけじゃない。ただ、自分の利益や名誉のために、聖天使の肩書きが欲しかっただけなのよ」


カーシャは一瞬、目を閉じる。


瞼の裏には、青ざめた顔で必死に言い訳を重ね、涙を流して許しを請う3人の姿が浮かんでいた。


口にするのは、保身のための言葉ばかり。守るべき国の人々や、迷惑をかけた仲間の天使たちへの想いなど、一言も出てこなかった。カーシャは怒りを通り越して、憐れみをもってそんな3人を見ていたのだった。


「あの子たちは、“得る”ことこそが幸せだと思い込んでいるけれど、そんなもの所詮見せかけよ。本当の幸せは、“与える”ことで生まれるの。それが分かっていればあの子たちも、ここまで身を堕とさず済んだでしょうに」


カーシャの言葉に、イリスも静かに頷く。


誰かの力になれた時、大好きな人を笑顔に出来た時、胸に広がる温かさ。“得る”ことで感じられる満足感は一瞬だが、“与える”ことで生まれた幸せは幾重にも連鎖し、自分だけでなく、周りのたくさんの人々にまで広がっていく。


“与える”幸せを知らないリタたちは、自分が“得る”ことばかりに執着し、最後には全てを失ってしまった。


「…じゃあ、私はもう行くわね。また決まったことがあれば、報せに来るわ」


「はい。ありがとうございます」


カーシャは病室の扉に手をかけるが、ふと振り返って。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ