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8.教育的指導


 桜舞い散る春とはいえ、日本列島の気温は低い。さらに、島に比べれば真冬と言って良い。

 冬服のセーラー服が暖かくて有り難いが、そもそも長袖着用になれていない島暮らしの俺としては、肩が凝る品物である。

 肩のフリーランスを選ぶか、暖かみを選ぶかと言えば、後者を選ぶ。即答で。

 あと、スカートは開放感がハンパねぇ。


 JCとのファミレスイベントは無事終わった。


 いやはやなんとも有意義なイベントだった。複数の女の子と喋り放題なんだぜ。

 みんな、タイプの違う可愛い子なんだぜ。

 なんて名前のエデンだ?


 家に帰って、荷物を部屋に放り込み、颯爽とナオの家にお邪魔する。自慢してやるんだ。


「寒む寒む寒む、ナオおるかー!」

 勝手知ったるナオの家の部屋割り。あやつの部屋に直行だ。


 ナオの部屋は暖かい。エアコンが温風を吐き出している。ナオも俺と同じで寒がりだ。

 ナオも今帰ってきたようで、丁度着替えの最中だった。パンツが白のブリーフからチャコールグレーのトランクスに替わっている。前開き付きのヤツだ。こやつめ、色気付きよって!

 ナオも俺と同じで寒がりで窮屈な服が嫌いだ。パンいち、シャツいちになって床に胡座をかいている。


「おー、楽しかったみたいだな」

「分っかるー?」


 女子トークが如何に素晴らしかったかをネチっこく話してやった。


「んで、ナオ、お前の方はどうだった? 野郎ばかりで何話してたんだ?」

「んーんなー……」


 ユキちゃんみたいな反応だ。それ、男子がやっても可愛くないぞ。


「岸と佐藤と吉田の3人とでダラダラ話してたんだけど……」

 岸は背が低くてカワイコ型のスケベそうなやつ。佐藤は眼鏡で真面目そうでスケベそうなやつ。吉田は……見るからにナンパでスケベだ(断定)。スケベと断定できる選択眼を持ち得たことに、驚きと成長を感じる。


 ――これが女子というものか――。


 ちなみに、吉田だけは俺たちと同じで転校生だそうだ。その辺の繋がりでナオと仲良くなったらしい。


「喋っていいか?」

「お、おお!」


 自分の世界に浸っていたのを温かく見守っていてくれたようだ。その目はジト目という種類ではないと信じるぜ、俺は!


「……最初はアオイを紹介してくれ。次は金を出すからアオイのパンツ盗んで持ってきてくれ。その次はアオイの裸を詳しく。その次の次はアオイをスーパー銭湯に誘ってくれ。それだけの内容で今までかかった」

「男の子だな! 楽しそうだな!」

「うん、楽しかった」


 ニチャリとわらうナオ。俺もたぶん、同じ種類の笑顔を浮かべてたはずだ。

 ……どうしても他人事なんだよ!

 でもって、ナオのベッドに寝転ぶ。嗚呼、開放感バンザイ!


「アオイは、……リアルタイムでちんちんおっ立ててる男の子と話するのは嫌か?」

「自分を鏡で見ているようで面白い」


「アフターでおっ立てるのは?」

「理解できるだけに非難できねぇな……。女の子の裸を思い浮かべてハァハァしたい年頃なんだよ俺たちは!」

 世代を小馬鹿にするように、手をヒラヒラさせる。


「もし、文月先生がアオイの目の前に立って親しげに話してくれたら?」

「性的に興奮する」

「ヨシ! いつものアオイでよかった」


 男の子も中学生ともなれば、しかたないよね。頭とか理性とかじゃないんだ。お腹空いたとか眠たいとかと同じ、体からの要求なんだ。むしろ正常に発育してる証拠なんだと俺は思う。


「……んなんなナオよ、なんとかして文月先生と仲良しになれないかな? お家へ招かれるほどの」

「ンナンナって何だよ?」

 おっと、ユキちゃんの癖が移ったようだ。


「考えてみよう。その時は先生のおパンティをちょろまかしてきてくれ。着用未着用に拘らず金を払う。洗濯前なら高額で取引したい」

「任せられよ」

 俺たちはがっしりと握手した。


「おパンティついでだけど、ブリキユアの柄入りおパンツならもう履かないから、ヤロウ共に売っても良いぞ。上がりは山分けな」

「それは止めとけ」

「なんで?」

「例えば、文月先生のおパンティを手に入れて満足して飽きてきた、その次の行動は? アオイだったらどう動く?」

 より刺激を求め、理性を制御できなくなって力づくの行動に出るだろう。

「……やばいな。俺なら先生を性的な意味で襲う」

「だろ?」

 襲われる可能性が大か……。

 おパンツ販売計画は廃案だ。


「次の、俺の裸を詳しくって項目はどう処理した?」

「見てたのはツルペタ時代だったから、男とそう変わらんかったって答えておいた」

「残念がってたろう?」

「特に吉田な。四つんばいになって嘆いていた」


 あいつ、思ってた以上にスケベだったな。


「風呂の件は? 男湯と女湯別々だけど、それでも良いって言ってなかったか?」

「よく知ってるな。その通りだ」

 男だもんなー。


 ……いや、俺、女だった。

 

直央(なお)、入るわよーってンナぁぁぁーッ!」

 ノリ子おばさんだ。なにかな、ユキちゃんの物まねが主婦の間にも流行ってるのかな?


「何してるの! あああああんた達ッ!」

 ビシバシと指でさされた。


「何してるって……」

 ナオは椅子に座ってゲームやってる。シャツ1、パンツ1で。

 本土へ越してきて買ってもらった最新バージョンのシューティング系eスポーツだ。


 で、俺はナオのベッドに横になって漫画本読んでる。ハスター×ハスターだ。島だと最新刊が何ヶ月も遅れてしか来ない。かなり間が空いていたので心配していたが、さほど話が進んでなくて助かった。

 で、俺もスポーツブラ1、おパンツ1だ。エアコン様々だ。暖かいんで島と同じ生活が出来て助かる。


「アーッ! 教育を間違えたァーッ!」

 頭を抱えたと思ったら、髪の毛をグシャグシャにかき回すノリ子さん。


「これより臨時で性教育を行います」

 あ、ノリ子さんのスイッチが切り替わった。


「一階ダイニングを使いましょう。如月さんからいらっしゃい」

「あ、はい!」


 普段は優しいノリ子さんだけど、先生スイッチが入ってしまったら、おじさんでもかなわない。黄色い背表紙の本を本棚にしまって、先生の後を付いていく。


「ダーッシャオラッ! 服着て! 服ッ!」

 あ、服ね、セーラー服ね。はいはいただいま!



「そこへかけなさい。まずは如月さんへ質問です。赤ちゃんは母親の胎内から生まれてくるのは知ってますね? ではその赤ちゃんは、母親のどこから出てくるんでしょう?」

「……おへそかな?」

「アイシーアイシー、そこからですかそうですか」


 先生は右肩をぐるんぐるん回し始めた。

 

 して――

 1時間が過ぎ、性教育が終わった。


 正直、衝撃的だった。

 ぶっちゃけ、生命の神秘を知った。


 嘘偽り無く……性的に興奮したのは伏せておこう。絶対怒られる。


 まさか、あんなだったなんて……。あれがアレだったなんて……それがああなってあんなんだったなんて……そうか、今晩試して……


 ノリ子先生が恐ろしい顔をして見下ろしている。腰を手に当てた激怒モードだ。骨法の握りはやめようね。

 試すのはまた今度。……ほとぼりが冷めてから。


「わかったかしら? 如月さん?」

「はい、理解しました。全然知りませんでした。おへそなんて言ってた1時間前の自分を殴ってやりたいです」


 俺の思想は矯正された。ノリ子先生の言いなりだ。言いなりが楽で良いんだ!


「解ればよろしい。では次、睦月君を呼んでらっしゃい」

「はい」


 俺は指図されるがまま、2回のナオの部屋へ行った。

 ナオは椅子の上で正座して待っていた。きちんと学生服の詰め襟までとめている。

 ナオは俺の顔を見るなり背筋を伸ばして姿勢を正した。


「お呼びだ、ナオ」

「はい、行ってきます」


 頑張れナオ。一歩踏み込むまでが地獄だ。一歩さえ踏み込んでしまえば、あとは極楽だ。

 


 して――


 ナオが戻ってきた。

 真っ赤な顔をして。

 たぶん、俺もあんな色の顔をして戻ってきたんだろうと思う。


「どうだ、ナオ。お前、どこまで知ってた?」

「精通のところまでは知ってた。後は知らなかった」

「俺は精通すら知らなかった。ナオが知ってるって事は、精通したんか?」

「した。最初は夢精だった。そして、してる。または、する」

「そうかそうか。ナオは大人なんだな。で、おかずは俺か?」

「んー、最初はアオイから入って、プロの方々に進んで、時々アオイで締める。通常、プロで締める」

「そうか。時々間に合わないのか。ナオは大人なんだなと思ってたけどまだオコチャマな部分を残してるんだな」

「アオイの体型は、すとーんぺちゃーんロリだし。僕は平均的豊満さがストライクだからプロの方で終わるのも正常な証」


 そう、ナオは凸凹した体型でないと興奮しないやつなのだ。ロリは全然ダメなのだ。

 ……Me to.


「……実のところ、ある程度成熟した女の人の股間に興味有る。それはアオイも守備範囲だ」

「そうかー」

 俺はスカートをめくっておパンツを覗いた。ナオがガッツリ覗いてきた。


「その画像限定なら興味津々だ。ないってスゴイよなー、アレ的に」


 俺もアレだ。ノリ子先生の教育の一環として、学習用資料としての公的なナニの画像を見せてもらった。

 全然色気もクソもないから教育用資料なんだろうが、ずいぶん興奮した。男子のを見せられて萎えてしまうまで興奮状態だった。


「そうかー」

 俺も持ってるのかー。このおパンツの中にー。


「まあ、なんだ、とりあえず、な!」

「うん、とりあえず、な!」


 俺たちは……お互いの……


 ナオは、ゲームの続きを。

 俺は漫画の続きを読んで、いつも通り同じ部屋にてゴロゴロして過ごした。


 

 日が暮れてきたので帰ることとした。

 ドアを開けると、ノリ子さんが立っていたんでびっくりした。わちゃわちゃしてるのは何故?


「何もなかったの?」

 ノリ子さんが目を丸くしていた。


「何もなかったって……何が有れば良かったんスか?」

「いやほら――」

 ノリ子さんが狼狽えている。あのノリ子さんが!


「見つめ合うとか↑ キスとか↑ え? なんもない? そんな! せっかくの幼なじみがもったいないじゃない!」

「そんなと言われても――」

「わたしのカップリングがぁー!」


 こんなんでカップリングになるなら、地球と月はとっくに愛人関係になっている。


「じゃ、日も暮れたんで、また明日」

 よくわからん精神状態のノリ子さんを放っておいて、家に帰った。

 

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